04:意地っ張りの見栄っ張り/みかさに


【夢主視点】


 さて、本日のノルマの半分が片付いた。あとは午後の演練だけだ。だから私はいつもと同じように待っていてくれた三日月さんと庭に出て、春の景色を楽しんだ。いつの間にか梅が散り、桜が咲いている。私の本丸の四季は大体今の日本と連動するようにしている。そのせいで異常気象が多い気がしないでもないけど、まあ、いっか。

「今日は庭の散歩で済ませるか?」
「うん、演練の準備もあるし」
「と、言うと巫女装束に着替えるのか」
「正装だからね。あーあ、巫女服は着慣れないんだよなあ」
「毎日着ていればいいのではないか?」
「無理だよ」
 それとも、と三日月さんを見上げた。
「三日月さんが着付けてくれるの?」
「ああ、それは良いかもしれんな」
 すぅと目を細めた三日月さんに、ああこれはちょっと狼さんの雰囲気だなと私は苦笑してしまった。
「ウソウソ、ちゃんと自分で着るよ、もし困ったら乱ちゃんを呼ぼうかな」
「俺ではダメか?」
「ダメじゃないけど、恥ずかしいから」
 わがままを言わないでと、腕を伸ばして不満そうな頬をつんつんとつついてみた。それだけでもわかるすべすべもちもちのきめ細やかな肌に、いいなあと思いつつ、私は言った。
「素敵な人に私のみっともないところ見て欲しくないんです」
「意地と見栄か」
「そんなもんですよー」
 だから三日月さんは悩んだり苦しんだりしないでと笑えば、仕様もない主だと三日月さんは呆れ顔で、私はそらでいいのと花曇りの下に広がる桜の木を見上げた。

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