プロローグb

 研究者、そしてあの子を取り戻すために家族であるきょうだいと過ごした5年間の記憶を含む時間を、全て差し出した女の子。それが哀れなミキという子。
 でももし、もしもミキという子に別の結末があったなら。

 全てを差し出して、家族と二度目の再会をして、そこからまた家族として無くした時間を埋めるようにごく普通の研究者気質の女の子として暮らす。そんな、つまらない人生ではない結末。

 そんな違う未来があったなら、ミキという子は一体どんな人生を歩むのか。

「ねえ世界、貴方はその方が喜ぶのでしょう」

 さあまたひとつ、世界を侵略しましょう。強奪しましょう。創造しましょう。さすれば世界はまたひとつ、新たな世界を増やすことができ、存続できるのだから。

「みどりは本当に僕を楽しませようとしてくれる」

「その方が好きでしょう」

「ああ、楽しみだよ、僕の創造主」

 そうして笑った世界に、私は指先でひとつの世界からミキという子をつまみ出したのだった。

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