【太宰視点】


 夜、中也と中野の歓迎会として飲み会が開かれた。いつものように未成年の杏はツマミだけ作ってへやにもどっている。そんな中で俺は安吾と仲よさそうに上機嫌でいる中原を見ていた、はずだった。

 いつの間にか中也が隣にいる上にオダサクと安吾は二人で飲んでる。中野は小林と共にツマミを食べ、足りなくなったら徳田が台所から杏作ったツマミを持ってきていた。
「おい聞いてんのかモモノハナ野郎」
「アッハイ聞いてます!!」
 あのなあ、と中也は珍しくそんなに怒ってないらしかった。どうしたんだろう、転生したことで何か変わったのだろうか、そう考えていると中也は言った。
「お前、司書のこと好きだろ」
 とっさに否定しようとした。だけど、認めた気持ちを否定することは出来なかった。黙っていること、数秒、そうかよと中也は呟き、どこか宙に語りかけるようにぼやいた。好きなら、ちゃんと捕まえとけよ、と。
「ああいう人間はすぐどっかいっちまう」
 その言葉の意味が分からなくて、俺は何も言えなかった。歓迎会らしからぬ、重い雰囲気が俺と中也を包んでいた。
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