【夢主視点】


 予告した通り、徳田さんをリーダーに、太宰さん織田さん坂口さんが潜書することになった。
 再びアルケミストとしての力を使って四人に潜書してもらう。ふらついたが、前回よりずっとうまく潜書してもらえたと思う。小林さんが心配そうに駆け寄ってきてくれたが、大丈夫と支えられることを断って、鏡を見つめた。そこには徳田さん達が無事に潜書を進めていることがわかる映像が見えた。
 しかし次の瞬間、太宰さんが怪我をした。思わず太宰さんと叫べば、小林さんが僕の背中を叩いてくれた。そうだ動揺してはいけない。とりあえずインクはまだある。補修は可能だ。僕の、アルケミストとしての力が持つか分からないが。
 結局、親玉にはたどり着けなかったが最下層まで進んだ徳田さん達は帰還した。
 すぐに太宰さんに駆け寄れば、ありがとうと言われる。何がありがとうなのかと思いながらとにかく補修室へと皆で運んだ。
 怪我をしたのは太宰さんのみ。 ベッドに寝かせると、僕はインクとアルケミストとしての力を使って彼を補修していく。ある程度治れば、あとは寝ていれば完治する。よかったと安堵すると、徳田さんに体は大丈夫かと言われた。大丈夫と言ったが、ひどい顔をしていると織田さんに言われ、まじかと僕は皆に言われるままに補修室の空いてるベッドに寝かされた。僕はインクとアルケミストの力で治ったりはしないのだが、とりあえず寝ていればマシにはなるだろと坂口さんに言われて、その通りですと僕は両手を挙げた。うん、もう白旗を振ってもいいかなってぐらいに、降参だ。

 眠っているとふと頬に温かい人の熱を感じた。はっと目を開けると、太宰さんが心配そうに立っていた。
「太宰さん、起きたんですね!」
「うん。そりゃ俺だからね! で、どうして杏がベッドで寝てるの?」
「それは、」
 太宰さんの補修をしたからですだなんて言えなくて口ごもれば、言いたくないのと太宰さんが眉を下げる。ああその子犬みたいな目はずるい。
「だ、太宰さんの補修をしたら、疲れてしまって」
「ああ、そっか! それなら寝てれば治るんだな?」
「はい。治ります」
 それならゆっくり寝てろよと言われて、僕ははいと返事をした。そしてそのまま椅子に座った太宰さんに、疑問符を浮かべる。
「太宰さん?」
「元気になるまで付き添ってるよ。誰かいた方が心強いだろ」
「そう、ですね」
 風邪みたいなものと考えればそれが正しいのだろう。ぼんやりとそんな事を考えていたが、迫り来る睡魔に、ああもうダメだと目を閉じた。

………

 それから数時間。起き上がれるようになると、僕は時計を見て、夕飯を作りに行きますねと太宰さんに言った。もう大丈夫なのと言われて、本調子ではないですが平気ですと答えれば、うーんと考えてから、何かあったら助けるからと僕についてきた。
 しかし夕飯作りに手を出すつもりはないらしく、僕の調理風景をじっと見ていた。
 無事全員分の夕飯を作り上げると、夕飯後に小林さんの転生祝いに酒を飲むという皆さんに、僕は未成年ですのでとツマミを用意して部屋に戻ったのだった。
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