夢 祝福の月見草


▼ 03*お茶会

 朝、ミチルが起き上がると召使がドアをノックした。ミチルが着替えを済ませて扉を開くと、朝食の時間ですと召使は言ってその場を去った。
 ミチルはそのまま部屋を出、適当に歩く。否、適当にではなく、目的を持っていたようだ。やがてたどり着いた食堂では、おはようございますとこれから食事を始めようとしていたグィネヴィアが笑っていた。
 ミチルが朝食を食べ終えると、グィネヴィアはお茶会に誘ってもいいかしらとミチルに提案した。眉を寄せて理解できないと言った顔をするミチルに、だめかしらとグィネヴィアが眉を下げる。その顔に、別に構いませんけどと戸惑いがちにミチルがゆっくりと応えると、まあそれは楽しみだわとグィネヴィアは喜んだ。

 かくしてお茶会。朝食を食べてまだそうたってないのでお茶菓子はスコーンがいくつかだけだった。ミチルはスコーンと紅茶を目の前に少しばかり不安そうな顔をする。その顔に、スコーンは初めてかしらとグィネヴィアが言うと、ミチルはこくりと頷いた。
「そうなのね! ええっと、食べ方は好きなようでいいのだけど」
 私はこうするのとグィネヴィアはスコーンを上下で割ると、割った面に蜂蜜とバターをのせた。そうして口に運んで見せたので、ミチルは同じようにバターと蜂蜜でスコーンを食べた。そしてぱちぱちと瞬きをしたミチルに、気に入ったかしらとグィネヴィアは頭を傾けた。

 そのまま蜂蜜とバターで一つのスコーンを食べ終えた時、紅茶を飲んでからグィネヴィアは言った。
「あなたは愛らしい姿をしていますね」
 絹の糸のような白く美しい髪、丸い黄色の目はまるで満月のように静かに輝く。グィネヴィアがそう褒めるとミチルはすっと目を細めた。
「そうでしょうね」
 当然であるとの肯定の言葉にグィネヴィアはふふと笑う。
「ふふ、ねえ、明日ドレスを着てみてくださらない? 着てみてほしいドレスがあるんです」
「別に構わないわ」
 ミチルがすぐに返事をすると、グィネヴィアはとても楽しそうに笑った。そしてどんな色がいいかしらとグィネヴィアが思案し始めたのを見たミチルは、先ほどの自信はどこへやら、気まずそうに顔を背けた。すっかり、スコーンと紅茶から手を離してしまった二人に、護衛として近くにいたパーシヴァルは、スコーン食べないのかなと首を傾げていた。



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