その後、抹茶アイスをお代わりした

ギルノブ/出会い/CP未満/他のサーヴァントも出てきます
!ほぼ初書きですので偽物感がとてもあります!


 信長は暇だった。暇だから何かパーッとやらかしたかったが、手元に程よく炎上しそうなネタが無かった。
 暇じゃの。信長はぼやきながら歩く。マスターのリツカは何やら召喚部屋に籠っている。こんなに大所帯で使える奴が揃っているのにそうも呼びたいサーヴァントがいるのかのう。信長は不思議には思いつつも大して興味を持たずに食堂に入った。
「赤いの! わしに抹茶アイスを寄越せい!」
「そんなものは無い。と、言いたいところだが」
「え、あるの? わしめっちゃ適当だったんだけど」
「君が飲みたいと言うから抹茶を常備してあるだろう。それで作ったアイスを食べたいとマスターが言っていてね」
「マスターは話が分かるのう!」
「全ては渡せないと言いたいんだが」
「うむ。マスターの分なら許す」
「……やけに聞き分けが良いな?」
「んー、別にここで三段撃ちしちゃってもいいんじゃが」
「やめてくれ」
 あーだこーだ言っている間にエミヤは抹茶アイスを冷やした皿に丁寧に乗せて信長に差し出した。白いクッキーが添えられているが、ウエハースの代わりだろうか。信長は赤い目をキラキラと輝かせて、よくやったとエミヤを褒めてから冷たい皿が乗ったトレーを持ってテーブル席に移動した。
 ひやりと冷たく、とろりと溶ける舌触り。滑らかでありながら、お気に入りの抹茶の香りがしっかりと主張する。舌鼓をうち、信長はいかにも上機嫌そうになる。周囲に居たサーヴァントは、今は無害そうだからと彼女に目を止めることがない。触らぬナントカに祟りなし。そっとしておくに限る。

 しかし、そんな彼女に声をかける者がいた。
「おい」
「あ?」
 信長が顔を上げるとこのカルデアで見かけぬサーヴァントがいた。はて、どこかのレイシフト先で見たことがあるような無いような。信長はぶっちゃけよく覚えていないサーヴァントを前に、首を傾げる。
「なんじゃ貴様」
「我を忘れたか」
「え、何、ナンパ? そーいうのわしめっちゃ要らないんじゃけど」
「たわけ! どこぞの特異点で我に傷を負わせたことを忘れんぞ!!」
「はあ??」
 全く身に覚えがないと信長は赤い目でじとりと男を見る。このカルデアの中でも古参の部類に入る信長は、マスターの要請を受けて様々な特異点に駆り出される。それこそ、大なり小なり、様々な戦場や街を見てきた。
 苛立ちを抑えずにその場に立ち続ける金髪に赤目の男。その金色の後ろを、ひょいと小さな金色が通った。あれは確か子ギル、子ギル?
「あー! 高笑い金ピカ神性弓兵!!」
 そういや、どっかの特異点で相手神性持ちだからと無理矢理駆り出された時に地味にダメージ通ったやつだ。
 信長はそこまで思い出すと、いやそこまでいちゃもんつけられるほどダメージ乗らなかったと思うんじゃがとぼやく。何せ、このギルガメッシュとかいうサーヴァントはチートオブチートみたいな性能をしていて、結局信長は宝具を打つだけ打って即退場する羽目になった筈だ。あまり良い思い出ではなかった。
「わしが宝具打てたのもダメージ通ったのも貴様がヨユーこいてたからじゃし、結局わしは即帰還したし。ていうかわしはアイス食べるから貴様の駄々に構ってる暇はないんじゃが」
「知ったことか」
 そのまま戦闘を始めようとするギルガメッシュに、おいと声をかけたサーヴァントがいた。おやと信長がそちらを見ると、カルナとアルジュナが揃って立っていた。シュミレーションルームの帰りだろうか。このカルデアのインド兄弟の仲は何だかんだで丸く収まっている。初めは一触即発、戦闘が起きる度にマスターは走り回り、信長も一回だけ連れて行かれたことがある。その際は説得が面倒になって第六天魔王波旬を使って炎上させた。流石神性持ち。よく燃えた。なお、その後はマスターやらマシュやらスタッフやら沖田やらにめちゃくちゃ怒られた。信長としても腕が溶けたので二度目はちょっと遠慮したい。
「む、その顔は」
「ギルガメッシュ、貴様が理に適っていない怒りを持つのは勝手だが、カルデア内での戦闘は禁止されている」
「ちなみにシュミレーションルームはクー・フーリンとアキレウスが使用中です。あまり酷いようならマスターを呼びますが」
 どうしますかと信長へと視線を向けたアルジュナに、いらんわと信長は返事をした。
「わしはアイス食べるから、マスター呼ぶくらいならそこな高笑い金ピカサーヴァントを連れて行け。どーせマスターが探しとるじゃろ。召喚されたばかりなら暫くはレイシフト祭りじゃな。嗚呼、そういや種火の貯蔵は充分じゃからレベルも心配することないのう」
「ふむ。それならマスターの元に連れて行く」
「おい我は」
「ならば私も手伝います。二人掛かりなら逃げ出されることもないでしょう」
「逃げてなど!」
「ハァー? どーせその様子じゃと召喚部屋から何も聞かずに出てきたんじゃろ? あ、貴様の友が居ったな。えーと、誰かエルキドゥを呼ばんか! なんか友なんじゃろ? よく知らんけど!」
「あーハイ、それなら俺が呼んできますよー。インドの兄弟はその英雄王をマスターの所に。アサシンの誰かいます?」
「あ、僕が伝えます」
「おー、赤い忍者よろしくの! てか緑茶ってあやつと仲良かったんかの?」
「あの人、いや人っていうかなんていうか、まあ、はい、あのひと割と話しやすいんで」
「いつの間にコミュ障になったんじゃ」
「なってねーよ!」
 かくしてロビンフッドがエルキドゥを呼びに行き、風魔小太郎が混乱しているであろうマスターのリツカに現状報告へ向かった。

 そうしてカルナとアルジュナに引っ張られて不機嫌ながらも食堂を去ろうとしたギルガメッシュだったが、ふと去り際に振り返り、言う。
「そこの女、名を言え」
「えー面倒なんじゃが」
 でもまあ、儂ってば先輩だしと信長は赤い口をぱかりと開いた。
「わしは第六天魔王、織田信長。貴様は英雄王ギルガメッシュ。ま、このカルデアに集うアーチャー同士じゃし、よろしくの〜」
 そうしてすぐに抹茶アイスに向き合い直った信長に、ギルガメッシュは興が削がれたと顔を背ける。それを見てカルナとアルジュナは一度だけ目を合わせ、頭を横に振ったのだった。

 その後、一部始終を聞いたマスターのリツカはギルガメッシュに、それって恋では?と爆弾発言を放ったりしたのだが、エルキドゥによって場は収まったのだった。

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