過干渉のマリオネット


09:爪紅



【夢主視点】


 朝ごはんを食べ終わると審神者さんが本丸を案内してくれた。加州さん達が案内してくれたところはほんの一部で、地図を手に山や川、野原や花畑を案内してくれた。その際に、刀剣男士が立ち寄ることを制限しているという鍛刀部屋にも案内してくれた。
「ここで鍛刀と顕現を行います」
「タントウとケンゲン?」
 刀を作り、刀に眠る魂を呼び覚ます。それが鍛刀と顕現だと審神者さんは微笑んだ。
「実は私は顕現が得意なんだそうですよ」
「そうなんだ!」
「はい」
 比較対象を見たことがないから何とも言えないのですけどねと、審神者さんは苦笑した。でも顕現っていうのは神様を目覚めさせる力で、魔法とは違う凄いものに感じて、僕は凄いなあって繰り返し呟いた。

 そうして審神者さんと広間で別れて、おやつ時。加州さんや大和守さん達とおやつのドーナツを食べた。その際に短刀だという五虎退さんや脇差だという鯰尾さんに会った。確かに脇差の皆さんより短刀の皆さんの方が僕と同じくらいの年齢に見える。

 揚げたてのドーナツをみんなではふはふしながら食べた後、あちゃーと加州さんがぼやいた。
「どうしたの?」
「爪紅が少し剥がれてたの。塗り直さなきゃ」
 そのまま部屋に戻る加州さんに、少し迷ってから後ろに続いた。

 加州さんと大和守さんの相部屋だという部屋はきちんと片付いていて、綺麗だった。
 あれ、ついてきたのと言いながら、加州さんは机に並んでいたマニキュアを手にして、手早くマニキュアを塗り直した。真っ赤な色に、派手な色だなあと思っていると、そういえばと加州さんが口にした。
「そういえばミチトも塗ってるね。黒いやつ」
 ああこれ、と僕は自分の手を見つめた。真っ黒なマニキュア、に見えるそれ。
「これは魔力を効率よく使うための魔法薬だよ。ここに居る間は塗ろうと思ってね」
 これは事実だ。マニキュアという装飾ではなく、魔力を引き出しやすくする魔法薬。体にこれといった悪影響は無いが、あんまりこの魔法薬頼りにいると依存症になる。知り合いの魔法薬学者に言われた言葉を思い出して頭が痛くなった。なんだかんだで僕は異界で魔法を使う際はいつもこの魔法薬を使っている。あんまり使わないようにしないとなあと思うだけ思って、僕は加州さんのマニキュアを見つめた。

 赤いマニキュア、派手なのにとっても加州さんに似合っていた。



- ナノ -