過干渉のマリオネット


08:朝の時間



夢主視点


 朝、目覚める。ふと、見覚えのない天井が見えて、ああここは違う世界だったのだと安心した。
 手早くシャツを着、ローブへと着替えた時、ミチト起きてるかなとの加州さんの声がした。
「うん、起きてるよ」
「あ、そう。朝餉がもうすぐだから迎えに来たんだけど、開けてもいい?」
「いいよ」
 そうしてするりと戸を開いた加州さんは、あれと不思議そうな顔をする。
「ミチトってそんなに髪長かったっけ?」
「うん、長さは変えてないけど」
「綺麗な黒髪……手入れしてるんだね」
「まあ少しは」
 あ、そうだと加州さんは僕の持っていた髪結い紐を指差して、結んであげようかと笑った。

 加州さんに髪を結んでもらう。どうしてこんなに髪が長いのと聞かれ、髪にも魔力が宿るからねと言えば、そういうところはこっちと同じなんだねと納得した様子だった。一方で、それ以上の追求がないことに僕はホッとして髪を加州さんに預ける。髪を結ってもらうのは家では普通のことだったけど、外の世界でこうして結んでもらったのは初めてだった。
「はい、できたよ」
「ありがとう!」
 それと、と加州さんは僕の格好を見た。
「その上着は着なくていいんじゃない?」
「あ、そうかな? 一応、正装の代わりにと思ったんだけど」
「え、正装の代わりになるのそれ。あ、そうじゃなくて、別にそう堅苦しい格好しなくていいって話」
「でも、なんだか落ち着かないっていうか、神様方に失礼じゃ」
「そういうの俺たち気にしないから。大体、普段着が洋服のやつは他にもいるし」
「そうなんだ! じゃあ、失礼します」
 僕はそう言って黒いローブを脱ぎ、きちんと畳んで部屋の隅に置いた。すると、加州さんの視線を感じて、どうかしたのと振り返れば、いやべつに大したことじゃないんだけどと加州さんは苦笑した。
「ローブ着てないと短刀のコ達みたいに見えるね」
「タントウ?」
「年齢的には脇差ぐらいだよね、なんか小さいなあ」
 っていうか細い。そう言って僕の手首をさらりと触った。細いのは確かだろう。タントウというのもワキザシというのも分からないけど、僕は平均より細く小さい自覚はある。
「じゃあ行こっか」
「あ、うん!」
 地味にショックを受けていると、加州さんが明るく部屋から連れ出してくれたので、僕は明るい気持ちに切り替えて朝の日差しを浴びた。

 昨日宴会をした食堂で朝食を皆で食べる。どうやら皆が揃い、審神者さんが来てからしか食事は始まらないらしい。いただきますと挨拶をするのを真似てから、僕は食事に手をつけた。加州さんと大和守さんが教えてくれた今日のメニューは焼きジャケと白いごはん、豆腐の味噌汁とたくあんだった。ごはんと味噌汁はお代わり自由だそうだけど、僕は目の前にあるものを食べるだけでお腹いっぱいになってしまった。しかしお代わりの声はたくさん聞こえてきて、皆たくさん食べるんだなあと感心してしまったのだった。



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