01:ありふれた日常

夢主視点


 朝、目覚める。着替えを済ませて自室の机に向かい、パソコンを操作する。一通りの報告を済ませると、主と呼ばれたので返事をする。すっと障子を開いて現れたのは近侍の三日月で、そろそろ朝食だぞと声をかけてくれた。今行くわとパソコンをシャットダウンして立ち上がり、部屋を出る。
「今日の出陣は決めたのか」
「ええ、もう決めたわ」
「そうか。それならば焦ることはないな」
 食堂に着くと他の刀剣男士達はもう揃っていて、私は席に着くといつも通りに、朝食後に今日の出陣部隊と今週の内番の割り振りを発表すると告げ、食事の挨拶をした。

 がやがやと賑やかな食事を終えると部隊と内番の振り分けを発表する。最前線で戦う第一部隊隊長に薬研を指名すると、彼は浅く頷いた。
「今日こそ亀甲貞宗を探し出してみせるぜ」
「ええ、頼んだわ」
 蛍丸や愛染も第一部隊として意気込みを告げてくれる。信頼してるわと伝えてから、第二部隊以下には数時間の遠征を頼んだ。内番は通常の三種類に加え、庭掃除や屋敷掃除、厨当番、洗濯当番、図書係など。当番の数はおそらくかなり多いだろう。でも私の本丸は所属する刀剣男士が多いので、刀の皆が苦にならないローテーションが組めている筈だ。

 食堂を出ると鍛刀部屋へ向かった。部屋には誰もいない。着いて来ていた三日月を外に待たせ、私は鍛刀システムを展開する。一振り分だけ素材を設定し、鍛刀を開始する。時間は三時間。しかし鍛刀で入手する刀は全て手に入っているので、刀ができても顕現させることは出来ない。それでも鍛刀システムを動かすことに意味があるので、私は無事稼働しているのをよく確認した。

 鍛刀をセットすると部屋を出て手入れ部屋に向かう。手入れ部屋では屋敷掃除当番の片割れである物吉が掃除を始めていた。早いわねと言えば、怪我をして帰ってきたときに清潔な部屋が使えるようにと照れ笑いをした物吉に、良い心がけだわと伝えて部屋を後にする。出陣すればどうしても怪我をする。怪我を治す為の手入れ部屋がきちんと手入れされていれば、スムースに手入れへと移れる。結果、時間が短縮されるだろう。物吉のような行動は推奨すべきだと感じた。

 台所の前を通ると、冷蔵庫を覗き込む燭台切と歌仙の姿が見えた。何か足りないのと聞けば、醤油や油揚げなどが足りないと言うので、必要分を書いて執務室に持ってきてねと伝えた。ふたりは笑ってそうするよと言った。

 庭では今剣がその身軽さを利用して木の剪定をしていた。岩融は全体の印象や落ちた枝を拾っている。私に気がついたふたりは、桜の剪定はしないでおきますよと言った。桜は難しいものねと答えてから考え、後で図書係に剪定の本を借りると良いわと提案すると、ふたりはそれは良い案だと頷いてくれた。

 執務室の前に着くと三日月が部屋の前で日向ぼっこを始める。用があったら呼べば良いと考えて三日月をそのままに、私は部屋に入ってメインのパソコンに向き合う。
「さあ、始めましょうか」
 そうして空中に現れた画面に手をかざし、展開される電子の海に思考を沈めた。



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