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 朝だ、空に日が昇り、明るい日差しが本丸に満ちていく。
 刀たちは各々起き上がり、各々朝の準備をする。
 亀甲貞宗はそっと部屋の前に座ると、ご主人様と話しかけた。

「ご主人様、起きているかな」

___すこし眠たいわ

「でももう朝だよ、起きなくちゃ」

 亀甲貞宗は部屋の戸を開き、審神者の部屋に光を流し込んだ。布団の中、金糸のような髪が流れている。

「ご主人様、起きようか」

___起こして頂戴

「もちろん」

 亀甲貞宗は布団を捲り、足元に追いやると、審神者の首と膝裏に腕を回して抱き上げた。
 そこに、パタパタと短刀が数振りやって来る。曰く、今日は天気が良いので日光浴は如何ですかと。

「ご主人様、どうかな」

___それもいいかもしれないわね

「じゃあそうしよう」

 短刀達が審神者がいつも座る椅子を縁側に運び出し、亀甲貞宗は抱き上げていた審神者をそっとその椅子に座らせた。
 庭では短刀達が遊んでいる。太刀や打刀が中心となって家事をこなし、力仕事は大太刀が、些細な雑用は脇差が主に引き受けている。
 穏やかで平和な本丸の日常がそこにはあった。

「ご主人様、今日もきっと素晴らしい日になるね」

 亀甲貞宗はそう言って審神者の顔を見た。金糸の髪がさらりと風に揺れ、金色のまつげが揺れる。しかし、その目は閉じたまま。瑠璃色の瞳はもう、長いこと亀甲貞宗を写したことがなかった。
 口は閉じている。肌はみずみずしいままに保たれている。爪の色は一向に褪せない。本丸に満ちるのは、ひどく優しい気配。

「ご主人様、明日もきっと穏やかな日だよ」

 だから、早くぼくの名を呼んで、と。



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