5.写真の中
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宮沢視点


 朝、まだ薄暗い時間に目が覚めた。早起きは良いことだと思いながら布団から出て、布団を部屋の隅へと畳んで寄せる。月乙女さんは起きているだろうか、起きていなければ朝食の準備をしても良いかもしれないと考えながら台所を覗けば、朝日が差し込み始めたそこで、写真立てを立てかける月乙女さんを見つけた。
「眠る前に眠らせて、朝日が昇ったら起こしてます」
 月乙女さんはおはようございますとこちらへ振り返った。その微笑みがどこか寂しそうで、ぼくはそっと写真立てを見た。
 シンプルな木枠の写真立て、その中に収めれた写真にはオレンジ色の髪をしたおそらく中学生ぐらいの年頃の女の子が映っていた。
「私の、姉です」
 姉と言われて、なるほどこの子は童顔で、月乙女さんは大人びているのだなと分かった。さらに髪の色も、目の色も、顔立ちもだいぶ違う。見た目だけならとても姉と妹には見えないだろう。
「そうなんだね」
 無難にそう相槌を打てば、月乙女さんは満面の笑みを浮かべた。
「ええ、大切な人です。とても素敵な人なんですよ」
 うっとりと語る月乙女さんには写真の中の姉への心酔が見て取れて、どこか危うい印象を受けた。でもどうしてだろう。そのことが喜ばしくも感じた。まるで、否定されていた何かが肯定されたような、否定を乗り越えたことによる大きな幸福のような、そんな印象を月乙女さんの雰囲気から感じたからだ。

 そうしていつもより早めの朝食は小松菜のミルクスープ。丁寧に作れられたそのスープはとても温かく、美味しかった。





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