アリガの夢3+/グラハウファンタジー系謎パラレル/勇者さま


 ジラソーレの首都、中心部の宿屋に金髪の少女は居た。朝の散歩にでも出掛けていたのだろうか、少女は部屋に入ると薄い上着を手にした。そんな少女の元にふわりと黒髪の少年と少女の姿をした何かが降り立った。金髪の少女は動揺することなく、笑みを浮かべた。
「おはようございます、ヨウさん、ミヅキさん」
「「おはようリーリエ!」」
「今日の朝ごはんはパンケーキ? それともライ麦パン?」
「コーヒー、紅茶、それともミルク?」
「「たのしみ!」」
「今日はたまごパンにドライトマトのオリーブ漬けだそうですよ」
「「たまごきらーい」」
「トマトはお好きでしたよね?」
「「うん!」」
 金髪の少女、リーリエは白い上着を着ると、ところでとヨウとミヅキに言った。
「何か情報はありましたか?」
 昨日の晩、何か気にしていましたよねと首を傾げるリーリエに、ヨウとミヅキは途端に眉を寄せて難しい顔をした。

「あのねリーリエ、驚かないで聞いてね」
「仲間がざわざわしてるから話を聞いたんだけどさ」
「"古き神が地に落ちた"」
「"否、自ら降り立った"」
「ええっと、それは、どういう……?」
 あのねリーリエとミヅキは困った顔をした。
「これは大変なことだよ、リーリエ」
「そうだよ、世界に危機が訪れるかもしれない」
「世界に危機?」
 そんなに大変なことなのですかとリーリエが首を傾げれば、ヨウとミヅキは揃って口を開く。
「「古き神、古き伝承、破棄されし過去、もう今には残っていない。文字に記されなかった、文字が生まれる前の古代の神々」」
「古き神?」
「精霊がうまれるよりずっと昔の話だよ」
「だからね、私もヨウも詳しくは知らないの」
「そうなのですか」
 ならば何故、世界の危機になると考えるのですか。リーリエが問いかけると、ヨウとミヅキはまた口を開く。
「「分からない」」
「ええ……」
 ごめんねリーリエと二人は二人して落ち込んだ。リーリエは謝らないでくださいと慌て、そういえばと口にした。
「そういえば、妙な噂を聞きました。どうやら世界各地で異常気象が起きてるのだとか」
「ほんと、リーリエ!」
「じゃあもしかしたら本当に!」
「世界の危機なのかも、ということですか」
「世界の法則から外れた神さま」
「新世界の誕生を祝わなかった神々」
「ポケモンが生まれるよりもずっとずっと昔の話」
「もう古き神は存在しかないはずなのに」
「「やっぱりおかしいよ、リーリエ!」」
「……調べてみますか?」
「「いいの?」」
「勿論です」
 だからこそ、私はお二人と契約したのです。リーリエはそう言うとそっと二人を見た。輝かしい白と金を纏う少年、ヨワ。輝かしい濃紺と金を纏う少女、ミヅキ。二人はにこりと笑うと、流石だよとリーリエの周りをくるくると回った。
「「流石は勇者!」」
「いえ、私は勇者では……」
 ただ私は、とリーリエは目を伏せた。
「世界を救うためなら、何だってしてみせると決めただけです」
 そう言って口を閉じたリーリエに、ヨウとミヅキはふわりと笑う。
「「だからこそ、リーリエは勇者になれるんだね」」

 さあ、朝ごはんを食べようとヨウとミヅキはリーリエの手を引っ張って食堂へと向かった。そんな二人に引っ張られながら、リーリエは二人を輝かしいものを見るように見つめ続けたのだった。

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