06.ブランコから見た世界
クダカミ/ゲーム寄り/捏造
決して寂れているわけじゃないのに人が寄り付かない公園。真昼間のそこにカミツレとクダリは居た。二人きりの公園は少しだけ哀愁を漂わせる。だからだろうか、カミツレはふとこんなことを言い出した。
「私、あんまりブランコに乗ったことがないの」
だって危ないじゃないと、カミツレは苦笑した。幼い頃からキッズモデルとして活躍していた彼女に、クダリはふうんと返す。彼はブランコに乗り、キィキィと音を立てて揺れていた。
「そうかな、ボクは好きだよ。ほらみて、こんなにこげるの」
そうして地面から足を離し、大きく体を揺らしてブランコを漕いだクダリに、カミツレは危ないわと驚いた声を出した。
危なくないよと、クダリは笑う。そして、えいと掛け声をかけて大きく揺れたかと思うとブランコから飛び降りた。
綺麗に地面へと着地したクダリはくるりと振り返ってカミツレを見た。
「びっくりした? 」
「びっくりしたわ」
心臓が止まってしまうぐらいにと告げたカミツレに、クダリはハハと笑ってから謝った。
「ごめんね。でもさ、カミツレも乗ってみようよ」
「ええ? 」
カミツレの不可解そうな顔に、クダリはふふと笑う。
「きっと楽しいよ。ほら、おしてあげる」
そう言うとカミツレの背中を優しく押してブランコに座らせ、そっと背中を押した。ゆらり、ゆっくりとブランコが揺れる。
「ね、これなら怪我しないでしょ」
「……ええ、本当ね」
微笑みを浮かべるカミツレにクダリが満足そうな笑顔を浮かべると、それに反応したようにカミツレが口を開いた。
「クダリは、ブランコに乗ったことがあったのね」
「うん?」
ブランコを止めて首を傾げるクダリに、カミツレは静かだけれどおかしそうに言った。
「地下にばかりにいるから、何だかもっと世間離れしていると思ったわ」
その評価にクダリは傾けていた頭を戻して目を丸くする。
「そう? でも、世間慣れはしてないとおもう」
「やっぱり」
でもね、とクダリは優しい声で語る。
「子供の頃は外にいたからね、きっとちいさな遊びならカミツレにおしえられるぐらい知ってるよ」
ニコニコと楽しそうな笑顔になったクダリに、カミツレはあらと不満そうに言った。
「わたしだって、何にも知らないわけじゃないわ」
そんなカミツレにクダリはさらに楽しそうに身振り手振りを交えて語る。
「じゃあ教えあいっこしよう!そうすれば、きっと楽しいよ」
その提案にカミツレはどうしてと不思議そうな顔をした。頭には疑問符が浮かんでいることだろう。クダリはそれに反応したのか、言葉を噛み締めるようにしながら説明した。
「教えたら、違うたのしさを見つけられる。教えられたら、新しいたのしさを知ることができる。ね、楽しいでしょ」
カミツレはどう思うと暗に質問したクダリに、カミツレは笑って答えた。
「本当ね。じゃあ、最初は何を教えてくれるの? 」
カミツレのその言葉に、クダリはボクからでいいのかと驚き、カミツレは勿論と答えた。貴方から言い出したんでしょうと楽しそうに笑みを浮かべていた。
「じゃあね、草笛を作ろう! 」
ノボリとよく作ったんだよとエピソードを交えて提案したクダリに、たのしみだわとカミツレは笑った。