04.その肩で夢うつつ
シンレイ/第三者視点


 レイジは頭を押さえながら起き上がった。顔を歪め、痛みに耐えているらしい。ベッドから出て部屋の机にある引き出しから錠剤を取り出すと二粒を手のひらに乗せ、机の上に置いてあった飲み水で飲み込んだ。
 レイジの朝は早い。大抵のポケモン達が起きる前に起き、最低限の身支度をしてから、ポケモンたちの食事に使う皿を取り出す。そうこうしてるともう大抵のポケモンたちが起きている時間になるので、ポケモンたちを見回り、体調を確認する。それが終わると急いで戻り、ポケモンたち一体一体にフーズを用意する。ポケモンによってフーズを変え、体調によってはきのみを混ぜ、必要そうならばすぐに手作りする。準備が整うと急いで運び、ポケモンたちに配っていく。彼らが食べている間にポケモンそれぞれいくつもある寝床の掃除をし、環境を幾分か整える。飲み水の確認をし、フーズを食べ終えた皿を回収すれば一旦は休憩が取れる。そこでやっとレイジは朝食を食べる事ができるのだ。

 レイジが家の中に入ると、リビングに向かい、立ち止まった。唖然とするレイジが見る先にはテーブルとイス。そこには人がいた。レイジに気がついて振り返ったのはシンジ。レイジの弟だ。
「びっくりした。急だったね。」
 ご飯は食べたかい、何なら用意するよとレイジはキッチンに向かう。その途中でシンジが立ち上がり、ついて行く。レイジはメニューを考えているからなのか、気がついていないようだった。そんなレイジがキッチンで立ち止まるとシンジが追いつき、レイジの腕を握った。レイジが振り返る前にシンジはその腕を引っ張って歩き出し、レイジはそれに引っ張られるままについていった。
 シンジが立ち止まったのはソファの前であり、彼はレイジをソファに投げつけるように腕を振った。レイジはバランスを崩し、ソファに倒れると頭をさすりながら上体を起こしてソファに座った。
 どうしたんだとレイジはシンジに聞く。シンジは黙ったまま、レイジを見下ろしている。困った様子のレイジに、シンジは静かに口を開いた。
「頭痛だろう。」
 その言葉にレイジはぽかんと口を開いて固まり、やがてふふと笑った。
「気がついたんだ。さすがだね。」
「さっさと寝ろ。」
「寝る時間は無いよ。」
 レイジの言葉に眉を寄せるシンジはどうやら困っているらしい。その一見不機嫌そうな顔に、レイジはクスクスと笑ってから自分の隣をぽんぽんと叩いた。
 シンジがレイジを見つめる。レイジは笑っていた。
「ちょっと肩を貸して。それなら休めるかもしれないよ。」
 どこか楽しそうなレイジに、シンジは少しだけ間を置いてから隣に座った。レイジはその肩にそっと頭をのせると、目を閉じた。それを一瞬だけ確認したシンジは息を吐いて、それからレイジの片手に手を重ねたのだった。

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