トウトウ/残りあと一回転/あと一押しで真っ逆さまですね
!もう何に注意と書けばいいのかわかりません!
!何でも食べれる方向けです!
!エログロはないです!



「きみと僕は鏡写しなんだ。」
 いつも通りのバトルサブウェイでトウヤはそう言った。私は文脈なんてひとつもないそれに驚いて、理解できなくて首を傾げた。そして素直に理由を問えばトウヤはゆっくりと伝えてくれる。
「僕が僕でなければきみはきみでなくて。僕がきみなら、きみは僕なんだ。」
 白熱灯の明かりしかない車内、照らされたトウヤは軽く俯いていて、それがやけに謎めいて見えた。まるで占い師みたいで、何と無くこれは占いのようなものかと理解した。きっと、誰にも分からないお告げだ。だってトウヤはいつも何を考えているのか分からなくて、でもバトルがとても強くて。そう、謎めいた人。ミステリアスで誰もが魅かれてしまう人。
「だから、僕はきみをここから解放させてあげられないんだ。」
 解放と聞いてまた首を傾げる。解放とはなんだろう。解放と言うからには私はどこかに囚われているのだろうか。例えば、私がこのバトルサブウェイから出ないことを意味しているのだろうか。でもそうだとして、私は自分が好きなようにこのバトルサブウェイでバトルしているだけだ。だから解放なんて物々しい言葉で言うようなものじゃない。
「僕の役目は終わらせることだから。こんな危険なことをきみにさせたくないんだ。」
 トウヤは軽く俯いて手の中のモンスターボールを見たままだ。その中にはトウヤが何より信頼しているのであろう、パートナーが待機している。いくら謎めいていたってそれぐらいは分かる。だって何度も何度も、数えるのが億劫になるぐらい私たちはバトルサブウェイで会ってマルチを戦ってきた。一回一回を私は覚えている。全て私の脳味噌にトウヤとのマルチバトルが刻まれている。なによりも楽しい、生きた心地のするバトルが。
「本当は僕がここに来なければ良かった。」
 突然発せられたその言葉を無視できなくて私は声をかけようと口を開いた。だって私はここで生きている。私にとって生きることはトウヤとのマルチバトルと言っても過言ではないのに。
「そんなこと、」
「僕がここに来ることさえなければ、きみはここに生まれなかった。」
 意味が分からなくて、その瞬間は何も考えられなかった。ねえ、何を言っているの?
「だからきみがここに囚われることはなかった。」
 白熱灯が揺れた。違う、電車が揺れた。揺れる体。僅かに動いた髪。ねえ、トウヤ。あなたは何を言っているの。
(私はただ、このバトルサブウェイで、あなたとマルチバトルをしたいだけなのに。)
「ごめん。」
 トウヤがこちらを見た。目が、合った。
(トウヤ、どうしたの、ねえ、私はこのマルチで、あなたと)
「罪を背負うのは僕だ。だって僕はここでしかきみと会えないことを知っていた。全部、知ってたんだ。」
 茶色い瞳、私と同じ?似た帽子?似た名前?
「きみをここに幽閉してしまったのは僕なんだ。」
 とうや、わたし、あなた、ここはなんせんめ?

「好きなんだ。」

 た



  た
   し
    は

  あ
 な
   た

    と

「あいして、ごめんね。」



title by.恒星のルネ

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