※病んでる情緒不安定シンジさん
※つまりヤンデレシンジさん
※リーグ後捏造
※家庭環境捏造



俺の世界はとても狭いものだった。

家族とはうまくいかず、兄に憧れた。兄が挫折をして、旅に出るまでは復讐心に似た熱情を焦がし続け、旅に出ると信念に基づいてポケモンバトルへと情熱を注ぎ続けた。
だからなのだ、旅をしても俺の世界は狭かった。
俺の世界、俺の精神世界はずっとずっと兄だけだった。幼い頃はまだ両親が居たのかもしれない。でも物心ついた頃には俺の精神世界に両親はいなかった。ポケモンもいないそこには、強い兄だけだった。兄が敗北して、別の道を歩むことにした頃は、兄の方法とは違う方法で強くなるという熱情に気を取られていた。だが、やはりそれは俺の精神世界に兄だけだった証拠だろう。兄だけだったのだ。
兄は生温い声で俺を呼ぶ。いつだってそうだった。かつての、敗北する前の兄もそうだった。兄は俺に優しい瞳しか向けなかった。叱られることだってあった。それでも瞳は柔らかな温もりを感じるものだった。

俺は、狭くて優しい精神世界で生きていた。

しかしそれは突然終わりを告げる。兄が俺に新たな旅を勧めた。俺はシンオウを巡ってからは兄の育て屋に身を寄せていた。そんな俺に、兄はイッシュやカロスへの旅を勧めたのだ。
育て屋はまさしく揺り籠だった。俺が唯一安心できる、兄の居住地。存在場所。兄のテリトリー。そこにいられることは俺に毒の様な心地良さを感じさせた。そんな揺り籠から兄は俺を追い出そうというのだ!

許せなかった。俺には兄だけだった。なのに兄はそうではないというのか。そんなのは理不尽だ。兄には俺だけでいい。俺には兄しかいない。揺り籠から取り出される赤ん坊は泣きわめく。それと、同じだ。

俺は床に兄を叩きつけて首に手を掛ける。ギリ、と力を込めると兄はやめろと穏やかに言った。首を絞めているのに、兄は穏やかで、瞳は、優しい。
その優しい目に、ぞくりとして手を離す。兄は咳き込み、息が整うと俺に微笑みかけた。

「シンジが嫌ならそれでいいよ」

違う、違うんだ。そんな風に言うな。まるで俺だけの身勝手のようじゃないか。俺の精神世界に居たあなたにだって責任はあるんだ。俺がこうなったのは兄の所為なんだ。

兄は立ち上がって夕飯のメニューの希望を聞いてくる。俺は何でもいい、兄が作るなら何でもいいと告げる。兄は笑って、それが1番困るんだと言った。何時もの日常、何時もの揺り籠に安心して、俺は一度だけ瞬きをして台所に立つ兄が見えるようにソファに座る。野菜炒めにしようと言うその首には赤い指跡。それだけが何時もと違うことで、早く消えてしまえと、その跡を睨んだ。





やさしさの夢幻に誰を呼ぶ
世界証明
空想アリア

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