お一人様ですか、と言われて、後で連れが二人来ると伝えると店員は俺を三人掛けの席に案内した。

今日はデントとコーンと俺の三人で買い物だった。店は定休日で、三人ともライモンで買う物があったから、三人でライモンで買い物になった。目的のものは全員違うから、一回分かれて、今俺が居るカフェで待ち合わせになっていたのだ。
店員にコーヒーを頼むと、俺はバオップを出して手作りのフーズをひとつづつ渡した。オヤツとして作ったフーズはバオップ好みの少しだけ辛い味。コーヒー豆を挽く音と穏やかなジャズ、普段カフェをやってる身ならではの非日常感が心地よかった。

俺の買い物はバオップのスカーフだった。俺とバオップが初めて会った日の記念日に、俺は毎年何かをバオップにプレゼントしている。いつもの感謝とこれからも仲良くしてほしいという願いで、俺はそれを行っている。バオップが気がついているかは分からないが、毎年この時期になるとそわそわし出すので、バオップなりに何か分かっているのだろう。独りよがりじゃない気がして、嬉しかった。

「ポッド、」
「ん、デントか」

呼ばれて振り向くと、デントが紙袋を片手に俺のいる席にやって来た。バオップとヤナップが軽くじゃれあい出すのを見てから、おせーよと言ってやる。するとデントはふにゃりと笑って、ポッドが早いんだよと言った。確かにそれは間違いなかった。俺は珍しく(バオップへのプレゼントとしてはいつものことだが)下調べをして買い物をしたのだから、早いに決まっている。
注文したコーヒーがやってくると、俺はそれを一口飲んでからデントに何を買ったのか聞いた。

「うんー、マグカップ。この間欠けちゃったから。」
「ふーん。三つ買ったか?」
「もちろん」

デントは紙袋を開いてマグカップを三つ出した。赤、緑、青のそれは型が同じだがプリントのデザインが全く違っていた。

「赤がフォッコ、緑がハリマロン、青がケロマツっていうポケモンをモチーフにしているんだって。」
「色的にほのお、くさ、みずタイプか?初心者用ポケモンとか?」
「そうみたい。お店で店員さんが教えてくれたよ」

デントはそう言うと店員にカプチーノを頼んでいた。それを聞きながら、俺はフォッコというポケモンがモチーフらしい、赤のマグカップを手に取った。マグカップの型はいつも使っているものと同じだが、少し大きめだった。

「バオップ達のはなかったのか?」
「探したけどなかったんだあ」
「フーン。でもこれ良いと思うぜ」
「それならよかった」

デントがホッとした顔をしていると、デントのコーヒーもやってきた。二人でコーヒーを飲みながら、仕事に関係の無い話をする。きっと、デントも非日常感が心地良いのだろう。きっと、そうだ。

「ねえ、ポッド。」
「んー、何だ?」
「あのさ」
「うん」
「デートみたい」

へにゃりとデントが笑う。突然すぎるその言葉に、何と無く、他の客が騒ついたような錯覚を覚える。どくんと、心臓の音が一際大きく体に響く。不思議そうな二匹の視線が痛かった。

「…ばーか」

視線を彷徨わせてから絞り出した俺のその言葉に、デントはいたく幸せそうに笑うのだった。





期間限定の逢引
(コーンが来るまでの)

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