チリオモ/学パロ/ポケモンはいる/notパルデア/タイトル未定7/つづくといいな


 午前中の授業を終えて、購買で買ったベーコンレタスサンドウィッチを手に、中庭に向かう。
 燦々と太陽光が降り注ぐ中庭は芝生が整えられ、植木が等間隔に並んでいた。実用性重視か。チリは何となく引っかかった。どうしてだろう、何かが。思考の海に浸りかけたチリに、オモダカがやや物憂げに言った。
「実は、チリさんにファンクラブの申請がきていまして」
「は? 何やそれ?! うちの?! どこに?!」
「落ち着いてください。ファンクラブは風紀委員会が管理しているので、私が連絡役を務めようと提案したんです。それで、その、承認していただけるとありがたいのですが」
「嫌やわ、そんなん」
「しかし、承認していただかないと、非公式ファンクラブができる可能性がありまして」
「非公式ファンクラブぅ?」
「非公式ファンクラブは風紀委員会の取り締まり対象なので、そういった集まりを防ぐ為にも、公式ファンクラブを作った方が風紀委員会としては助かります」
「はあ、何やのそれ。てか、オモダカさんはそういうの、ないん?」
「ええっと、これは校則の話なのですが」
「ん?」
「風紀委員会がファンクラブの管理をする都合上、風紀委員会に所属する人間にはファンクラブは存在しません」
「それって、それこそ非公式ファンクラブとかいうやつが出来るんとちゃうの?」
「そうですか?」
「オモダカさん綺麗な人やし」
「ふふ、そう言うのはチリさんだけですよ。私にファンクラブなんて出来ません」
「どうだか」
 それで、承認していただけますか。オモダカが問いかける。チリは長く長くサンドウィッチを咀嚼して、飲み込んだ。
「承認するわ。何かやることあるん?」
「いえ、全て風紀委員会に任せてください」
「そんならええわ。オモダカさんも気をつけるんやで」
「え?」
 きょとんとするオモダカに、チリは無自覚なお嬢さんやなあと頭が痛かった。そもそも、風紀委員会でも話題にならなかったのだろうか。ならないから、オモダカに自覚がないのだろう。組織的にうまくいってないのではないか。チリは不満から思考が偏るのを感じた。穏やかな昼休みなのに、何だかサンドウィッチの味が薄かった。

 午後の授業を受けた後、オモダカは、風紀委員会に早速報告してきますと、息巻いて歩いて行った。チリは空き時間が出来たならと、旧部活棟の奥にある白銀の扉の前まできた。鍵はもう空いていて、再び銀の鍵を使う必要はないらしかった。
 バトル同好会って結局何をする同好会なんだろう。そんなことを考えながら歩いていると、ふわふわと見慣れぬ何かが朽ちかけた温室内を漂っていた。桃色の薄布だろうか。導かれるように進めば、バトルコートに着く。そこには天井から大きな花が地面に向いて閉じていた。不思議と影はなく、太陽光がバトルコートを照らしている。
「何やこれ」
 チリが一歩、踏み出すとふわりと花弁が動いた。ゆっくりと花が開き、天井から少女が降りてくる。トン、と足を地面につけたのは、カトレアだった。
「は?!」
「超能力があるとは伝えた筈よ」
「えっ、何やったん?!」
 カトレアが瞬きをする間に、巨大な花は霧のように消えた。強い花の香りは元から温室に咲いていた花達のものであり、カトレアの幻想の花から放たれた香りでは無いようだ。
「アナタはどこまで理解しているのかしら」
「いや、何の話?」
「いいの、アナタが気がつくまで、この世界は回り続ける」
「回り続ける?」
「天は高く、地は深く。繰り返される、愛しい日々。繰り返される……」
「カトレアさん?」
「いえ、何でもないわ。まだ、早いもの」
「は?」
「世界がまだ、アナタを離さない」
 分かるでしょう。分からないでしょう。アナタには。カトレアはそう言って、まだ眠いわとふわふわ浮き始めた。何もかもが規格外である。チリは頭痛を覚えながら、とりあえずポケモンウォッシュでもしようと温室に水道はないかと探索を始めたのだった。

- ナノ -