チリオモ/学パロ/ポケモンはいる/notパルデア/タイトル未定3/つづくといいな


 昼寝と荷解きを終えて、夕方となっていた。カーテン越しの西陽を感じながら、チリは夕飯はどうするのかと聞いた。
「大食堂に行くか、ここで作るか、ですね」
「一応、水回りあるしなあ。オモダカさんは食べれんもんとかあるん?」
「特には。チリさんは作れるのですか?」
「初日は忙しいやろからって、マーケットに行かんくてもいいよう、シリアルとチョコレートバーは用意しとる」
「あ、それなら。紅茶のティーバッグは持って来ました」
「お湯沸かせばイケるな。ほなやってみよか」
 ケトルをよく洗っておいしいみずを沸かす。皿やスプーンをよく洗い、シリアルを盛り付けた。チョコレートバーの包み紙は銀色だった。
「お湯沸きました」
「ほんなら洗っといたマグに入れて、ティーバッグ入れて、二分な」
「はい」
 オモダカは辿々しく紅茶を淹れる。慣れてない様子が見て取れて。本当にお嬢様らしいなとチリは苦笑する。チリもお嬢様だが、よく屋敷を抜け出していたし、使用人に生活の知恵を教えてくれと強請ったりしていた。教育係も、自立した女性像があったらしく、父に隠れて色々なことを教えてくれた。
「出来ました!」
「ほな、ゆっくり持って来てな」
「はい」
 オモダカがゆっくりと机にマグを置いた。シリアルに紅茶にチョコレートバー。初日の夕飯にしては上出来だろう。ではとオモダカが手を合わせる。何をするのだろう。
「この地、この星に住まうわたくし達に、御母様の御加護がありますように」
 大きな窓から夕陽が射し込んでいる。オモダカの黒い髪がキラキラと輝いていた。黒い手袋の、隅から見えた肌が、輝いている?
「チリさん?」
 どうかされましたか。祈りを終えたオモダカは、きょとんとチリを見ていた。何も。チリは答えて、スプーンを手にした。

 シリアルと紅茶、チョコレートバーを食べ終えると片付けをした。風呂を沸かして、オモダカが持って来た入浴剤を入れる。ミルク色の入浴剤は仄かに甘い匂いがする。
「チリさんお先どうぞ」
「いや、オモダカさんが入り」
「いいんですか?」
「ええよ別に」
「わかりました」
 お先に失礼しますね。オモダカは風呂の用意を持って脱衣所に向かった。チリは荷物の中に、教育係をしてくれていた使用人からの手紙を発見した。どうやら入寮するチリを思って、不安な時はいつでも家に帰っていいとの旨が書いてあった。心配性だ。チリはクスリと笑う。そして、封筒に何かが同封してあった。コトンと床に落ちたそれを拾い上げる。鍵、だった。
「そういや、ここの卒業生って言っとったな」
 どこかにこの鍵を使える場所があるのだろう。チリはまるで宝探しみたいだと胸を高鳴らせ、チェーンを通して鍵を身につけた。
 お風呂いただきました。オモダカがそう言って出てくる。白いネグリジェを着た彼女はぽんぽんと髪をタオルドライしている。
「チリさんがお風呂から出たら、ポケモンたちの夕飯を出そうと思うのですが」
「ええな。フーズなら持って来とるで」
「私もです」
 ほんなら後で。チリはそう言って風呂に入る。ミルク色のお湯は、とろみがあって肌に刺激が少ない。いい入浴剤のような気がする。チリは温まりながら、入浴剤についても話し合った方が良さそうだと思った。
 チリが風呂から出ると、オモダカはドライヤーで髪を乾かし終えていた。
「髪、急いで乾かすわ」
「ゆっくりで構いませんよ」
「ポケモンたちが腹空かせとる」
「そうですね、では急いで」
「ん」
 タオルドライの後に、ドライヤーで髪を乾かす。すっかり乾かし終えると、オモダカと共にポケモンたちの皿を洗った。
「ポケモンは一体か?」
「いえ、六体です」
「お、意外とやり手なんやな」
「チリさんはどうですか?」
「六体」
「一緒ですね」
 オモダカが、ふふと笑う。可愛らしく笑う子だ。チリは胸の裏をカリと引っ掻きたいような心地がした。
 ポケモンたちの夕飯を終えたら、また皿洗いだ。ブラッシングもしたいんですと言うので、まだ初日で疲れとるやろと止めた。
「ポケモンたちはトレーナーを信頼しとる。信頼しとるとトレーナーが倒れたらどうなるか、わかるな?」
「はい。そうでしたね」
 焦っていたみたいです。オモダカの言葉に、ゆっくりでええんよとチリは言った。
 消灯は十時らしい。寮則と校則を読むオモダカを眺めていたチリは、眺めてばかりではいけないかと本を取り出した。
 古い本だ。だが、貴重というわけではない。ありふれた大衆文学のそれを開く。
 そうこうしていると時間になる。消灯の鐘の音で、オモダカがそっと電気を消した。チリは、くあと欠伸をした。おやすみなさい。オモダカはそう告げて、ベッドに入った。すぐに眠った彼女に、さて、自分も早く寝るかと思った。明日は諸々の説明会やクラスの顔合わせがあるはずだ。オモダカと同じクラスがいいな。チリは、そっと寝返りを打つ。そして、そっとオモダカを見た。するとふわりと、何かが光っていた。七色の光。何だろうと、チリは起き上がる。そっとベッドから降りて、オモダカを見る。ネグリジェを着ているものの、彼女は顔ぐらいしか露出していない。そっと首元の布を捲った。
「は、」
 きらきらと、輝く肌が、そこにはあった。

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