チリオモ/学パロ/ポケモンはいる/notパルデア/タイトル未定2/つづくといいなあ


 二人で薔薇園にいると、軽い足音がした。振り返れば、ここに居たのねと微笑む少女がいた。金色の髪は長く、ミステリアスに彼女を覆う。ガブリアスが隣に立っていた。
「私はシロナ。あなた達を探しに来たの」
「まあ、御免なさい」
「すんません」
「構わないわ。入学式の話が長いのが悪いんだもの。あなた達は寮分けを聞いた?」
「いえ、全然」
「そう。ええと、オモダカさんとチリさんよね?」
「せやで」
「合ってたわね。よかった。私と同じキアルト寮よ」
 耳慣れない響きにチリが眉を寄せる。オモダカはシロナさんは先輩なのでしょうねと微笑む。
「確か、生徒会長でしたよね」
「あら、知ってたのね」
「学園に入る前に、少しはお勉強しておいたんです」
「ふふ、そうね。生徒会ならバレても納得するわ」
 シロナの笑みに、オモダカも微笑みを返す。しかし、チリはオモダカの手が震えていることに気がついた。すぐにきゅっと掴むとオモダカがゆっくりと瞬きをした。
「チリさん?」
「寮の部屋はどこですか?」
「今案内するわ」
 行きましょう、ガブリアス。シロナの声に、ガブリアスがのそのそと歩き出した。オモダカはキラフロルを出したまま、チリが掴んだ手を振り解くことなく、歩く。チリは、手袋越しにオモダカの体温を感じた気がして、嬉しいように思ったものの、どうして彼女が震えていたのかが分からなかった。

 薔薇園を抜け、煉瓦敷きの道を進む。校舎を通り過ぎて、館の中へ。薄暗い廊下を進む。ステンドグラスの小さな窓だけが、並んでいた。そう、此処こそがキアルト寮館。シロナが一室の前に立つ。
「ここがあなた達の部屋。一年生から三年生までは相部屋なの。役職についてたら別だけれど」
「うちら、相部屋なんです?」
「ええそうよ。偶然ね」
「そらけったいな偶然やなあ」
 にっこりとチリが笑む。シロナも素晴らしい偶然ねと笑っていた。オモダカが、そっとチリの手を握り返した。
「あのう、少し休んでもよろしいでしょうか?」
「ええどうぞ。今日はもう一年生はお休みよ。学園の探索をしても良し、部活動の見学に行ってもいいわ。カフェテラスでお茶もいいわね」
「荷解きがあるんとちゃうん?」
「それはそうね。じゃあ、はい。鍵よ」
「どーも」
「ありがとうございます」
 じゃあね。シロナが足早に去る。どうやら用事があるらしい。しかし、入学式を抜け出した事で不良生徒扱いされると思ったが、そうでもないのか。チリはふむと頷く。オモダカがその間に部屋の鍵を開いた。
 そこは大きな窓だけの質素な部屋だった。明るい部屋に最低限の家具。チリとオモダカのそれぞれの荷物が、左右のベッドの上にあった。
「オモダカさんの荷物、多ない?」
「チリさんこそそれだけですか?」
 不思議そうなオモダカに、チリはこんだけあれば充分やと返した。
 チリがベッドに向かう。ぽすんと座ると、手を繋いだままのオモダカを引き寄せてころんと寝転んだ。驚いて目を丸くするオモダカに、チリは休まなアカンと告げた。
「体調、良くないんやろ」
「バレていましたか」
「もっと分かりやすくすればええのに」
「ふふ、見栄っ張りなんです」
「そんな気ぃはしとった」
「お見通しですね」
「そーやろ。なんせチリちゃんやからな」
「チリちゃん?」
「そ、呼びやすいやろ」
「ええと、私はあまり、その」
「気に食わんかったん?」
「チリさんはチリさんなので」
「さよか」
 昼寝したら荷解きするで。チリの言葉に、オモダカは、はいと嬉しそうにしてからそっと目を閉じて眠った。すぐに眠ったオモダカに、チリは全くこのお嬢様は手が焼けると、ブランケットを荷物から手繰り寄せたのだった。

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