チリオモ/学パロ/ポケモンはいる/notパルデア/タイトル未定/つづくといいな


 入学式。美しい薔薇を胸に、チリは学園に入学するのだ。お嬢さんばかりの学校。窮屈そうだ。チリは慣れないスカートにきゅっと唇を噛んだ。スラックスを選ぶこともできたが、令嬢としての振る舞いに煩い両親の手前、選ぶ事が憚られた。何でこんなところにいるんだろう。入学式がつまらなくて、苦しくて、嫌気が刺して。チリはそっと入学式を抜け出した。
 たったとは走る。スカートを揺らして、チリは薔薇園に辿り着いた。学園の隅にあるのだろうか。ひと気が無い。きょろきょろと辺りを見ながら歩いていると、声がした。
「キラフロル、私なら平気ですよ」
 誰だろう。チリはそっと薔薇の影から声の主を見た。
 スラックスの制服。長い黒髪。黒い手袋をしている。褐色の肌に、黒い目。否、その目は黒いだけでは無い。きらきらと輝く宝石のようで、きらきらと輝く星のような目だった。
 キラフロルがさっとチリを見た。あ、バレた。チリが薔薇の影から出ると、女の子はぱちりと驚いていた。
「あなたはどなたですか?」
「チリ。新入生や」
「そう、ふふ、チリさんも入学式を抜け出して来たんですね」
「あんたも?」
「はい。少し、退屈で」
「そうやな」
 うんうんと頷くと、少女は同じですねと笑った。チリ自身、美人の自覚はある。だが、目の前の少女もまた、美人だと思えた。
 薔薇の香りで咽せ返る。チリはそっと聞いた。
「なあ、名前、教えてくれへん?」
「え、ああ、言っていませんでしたね」
 失礼しました。彼女は微笑む。
「私はオモダカです」
 オモダカ。名前を口の中で転がす。綺麗な名前だと思えた。チリは、なあと近寄る。
「うちと友達になってくれん?」
「お友達! いいんですか?」
「かまへんよ」
「でしたら、是非。私、あなたとは気が合う気がするんです」
 どうしてでしょう。とても、近しい気がするんです。オモダカの大輪の花のような笑顔に、チリは笑みを返す。
「きっと、入学式を抜け出して来たからやろ」
 お揃い。チリが言えば、そうかもしれませんねと、オモダカも言う。
「クラスはどこになるんでしょう」
「一緒やとええね」
「寮はご存知?」
「まだ知らん」
「二人で怒られましょうね」
「ええなそれ」
 それと、とオモダカは言うのだ。薔薇の中。赤と白が入り乱れる園の中で。ああ、薔薇の匂いがする。
「ポケモンは好きですか?」
「勿論」
 大好きだ。そう伝えれば、オモダカは嬉しそうに笑っていた。

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