チリオモ/このあとマラサダにすっ転んだ/アローラに旅行に行く話を書きたかった。忙しそうなので観光地に行って羽を伸ばしてくれ~!!


!念のためネタバレ注意です!


 おとした。

「アカデミーの生徒たちは宝探しをするんやろ」
「そうですね」
「総大将にもあるん?」
 そういうもの。チリが問いかける。
 どうだったか。オモダカは答えた。
「今ではもう、ささやかなものです」
「その心は?」
「覚えてないですね」
 少なくとも、今は。オモダカの言葉に呆れたとチリは息を吐いた。
 午後のパルデアのリーグ。四天王の部屋の裏にある事務室で、ぱちぱちとチリは気怠げに瞬きをする。
「いつから秘密主義になったん?」
「私はいつでも素直ではありませんか?」
「恐ろしいほどにな。ま、ええわ」
 せやったら。チリがそっとオモダカの手を掴む。手袋越しに、柔らかく触れられて、オモダカはきょとんとした。午後のまどろみなんて拭い取られたようだ。曇りのない目で、チリがそっと指を絡めた。
「チリちゃんと、宝探し、してくれん?」
「……はい?」
 オモダカは声が裏返った。

 雲ひとつない青空、空を行き交うキャモメたち。夏のアローラは今日も晴れている。船上、甲板に出ると、ぶわっと海風を浴びた。
「来たなあ観光地!」
「スケジュールを開けるなんて驚きました」
 心の底から驚いた声を出すオモダカに、チリはドッキリ成功やなとにんまり笑う。
「前々から整理しとったんやで。おっさんたちとか、チャンピオンクラスの人らとか、手伝ってもろてなあ」
「そうだったのですね。ところで、チリはアローラに来たことかあるんですか?」
「さあ、どうやろな。ほな、頑張って行こか!」
「どこにですか?」
「アローラは四つの島でできとって、それぞれに有名な花園があるんやけど、ほら、オドリドリを変化させるミツの原産地や」
「ああ、花園があるそうですね」
「せやせや。そこに行って写真撮ろう思ってな」
「四箇所を巡ると?」
「正解や! ただの旅行者やと行けんレベルの花園もあるらしいし、宝探しにはぴったりとちゃう?」
 なあとチリが声をかけると、オモダカは戸惑いがちに頷いた。
「私でよければ」
 やや所在無さげな、少し不安そうな声音に、チリは目を丸くした。そこにはパルデアから離れて不安がるちいさな少女がいた、気がした。幻覚に頭を振る。そんなわけが無い。オモダカはきっと疲れているのだろう。チリは、オモダカのことが分かったことなんて、一度もないが。
「何を言うとるん。このチリちゃんが誘おうとるんやで?」
「それは、そうですけれど」
 じゃあ、まずは旅行に相応しいシャツでも買いに行こか。楽しそうなチリに、オモダカは良いですねと宝石のような目を蕩けさせて、微笑んだ。

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