チリオモ/宇宙の煌めき


!念のためネタバレ注意です!


 生きる。

 せんせい、いきるってなんですか。

「なあ、生きてるん?」
「はい、生きてます」

 タクシーから落ちた二人は元気に立っていた。お互いのポケモンたちがなんとかしてくれたのだ。キラフロルが一番頑張った顔をしている。
「ここは狭すぎてタクシーが戻って来れないですね」
「ちゅーかここどこ?」
「ベイクタウン付近かと」
「地下やん……総大将は先を急がんでな」
「さっさと出ましょう」
「そらアンタならこの辺のポケモンは近寄ってすら来ないやろけどなあ!」
 オーラが違いすぎる。チリはああもうと、オモダカに続いた。スーツを汚すことなく、すたすたと進むオモダカは今どこにいるのか分かっているのだろうか。
 ライトが欲しくなってきた。暗いと、オモダカを見失いかねない。しかし、ふわと何かが輝いた。淡く、輝いていた。チリが目を見開く。オモダカは淡々としていた。
「昔からこう言う体質なんです」
「いや、体質って問題か?!」
「医者にみせたこともありません。特に困ることもありませんので」
「いや、うーん、そうなん?」
「チリは察しが良くて助かります」
「何も分からんけど??」
 ふわふわと輝くオモダカに続く。キラフロルが嬉しそうに宙を舞う。もしかしたらキラフロルがオモダカを輝かせているのだろうかと思った。毒の花。なんの毒だろうか。
「この地下空洞は入ったことがあります」
「へえ、そうなん」
「あの時も同じでした。タクシーから、落ちて」
「うわあ」
「キラフロルが助けてくれました。そして、タクシーがここで挙動をおかしくするのは、決まっています」
「そんなら、そのルートは避けるんとちゃうの?」
「避けられなかったんです。運転手も分からないまま、罠に嵌っている」
「罠?」
 チリが首を傾げた。オモダカが立ち止まった。キラフロルがぱっと毒の花を咲かせる。どくびしが散らばった。
「チリ、動かないでくださいね」
「動けんわ」
「よかった」
 では、とオモダカは手を上げた。
「キラフロル、テラスタル、しましょう」
 輝く。

 チリには何も見えなかった。ただ、輝きの中で、何かが叫んだ。オモダカはその場から一ミリとて動かないで、それを退散させた。キラフロルは圧倒的な毒と花を以て、場を制圧した。
「これでタクシーを呼べますよ」
「そうなん?」
「はい。あれが磁場を分からなくさせるんです。ポケモンの脳に影響があるとか」
「研究しとるんや」
「当たり前でしょう」
 キラフロルがどくびしを一掃する。チリは漸く安心して息を吐いた。
「とりあえず、総大将はマニュアル作成な」
「なぜ?」
「今回のトラブルの解決方法をちゃあんと言葉にしてや。チリちゃんには分からんかったさかい」
「……難しいです」
「簡単ならチリちゃんにも出来るんやで?」
「はい」
 書類が増えましたね。オモダカは憂鬱そうに息を吐いた。

 せんせい、いきるってなんですか?

「生きるって、世界が輝いて見えること、だそうです」
「なんやそら」
 さあ、何でしょうね。

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