チリオモ/絶対偏愛神論


!念のためネタバレ注意です!


 絶対的な存在。
 もしもこの世に神様がいたとしたら、オモダカはきっととても愛されたことだろう。神様というのは、綺麗なもの、素敵なものが好きだと、相場が決まっている。オモダカの凛とした潔癖なまでの清廉な生き方は、神様が好むものだろう。
「チリ?」
「んー」
 変な顔してますよ。オモダカがくすくすと笑う。ベッドの中で、オモダカが、チリがプレゼントしたふわふわのルームウェアを、着ている。いいなあこれ。チリは服の手触りに満足しながら、オモダカを抱きしめた。白いその服は彼女の肌を美しく演出していた。
「どうかしたんですか」
「なんにも」
「嘘は良くありませんよ」
「チャンピオンってのは勘が鋭くないとできひんの」
「チャンピオンに限らず、ある程度のトレーナーならば、経験による直感が優れていると思いますよ」
「そういう話やったっけ」
「違うんですか?」
 もうええわ、それで。チリはぎゅうとオモダカの柔らかい身体を抱き締める。細身のチリよりは肉がついているオモダカの身体。抱きしめるといつも柔らかくて、長い手足が心地良くて、何より、こうして彼女を抱くのは自分だけだという優越感が嬉しかった。許されていること、だってそうだ。彼女はとても強いから、嫌だと思ったら無理やりチリを退かすこともできる。でも、それをしないから、チリは嬉しさが更に込み上げてくる。プレゼントした服を着てくれるのだって、独占欲が満たされて心が浮き足立つというものだろう。
「明日、早いんでしょう」
「ん。せやね、寝よか」
「はい」
 オモダカがゆるゆると微笑む。あ、幸せそう。チリは、オモダカが普段見せない顔をするのが好きだ。
「おやすみなさい、チリ」
「おやすみ、な」
 ちゅ、と触れるだけの口吻だけして、離れようとするオモダカを、きゅっと抱きしめて引き止める。
 不思議そうなオモダカに、チリは満面の笑みで言った。
「だっこして寝てもええ?」
「私は抱き枕ですか」
 呆れた声に、チリはくすりと笑う。
「不満か?」
「そうではないですが、寝心地が悪いのでは?」
「まあ、大丈夫やろ」
 だってこんなにふわふわだもの。チリの言い分に、あなたがいいのならとオモダカはそっとチリの背中に手を回した。
「誰にもやらんし」
「……チリ?」
 夜は更けていく。ふわふわのオモダカとシルクのチリが、同じ色のルームウェアで、神様なんて入る隙間もなく抱きしめあって、夜を明かしたのだった。

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