キバナ中心/夜食にはお粥でも


 ジュラルドンが風邪を引いた。
「ポケモン風邪の一種ですね」
 ジョーイは、錠剤を出すので、ご飯と一緒に食べてもらってくださいねと、笑った。

「ジュラルドン、落ち着いたか?」
 朝からぐったりとしていたジュラルドンは、今はキバナのベッドに寄り添うように座っている。目は閉じられ、眠っているらしい。呼吸は安定している。昼にご飯と食べた錠剤が効いているのだろう。
「皆、静かにな」
 しぃと指でジェスチャーすると、コータスがほうっと息を吐いた。

 ヌメルゴンは風呂場で何やら体の手入れをしている。自分で出来る限りの手入れを済ませてしまえるのは、ヌメラの頃からのクセだろうか。最弱と言われるヌメラは、怪我をしてはひとりで治してきたようだ。

 キバナはヌメルゴンを気にしつつ、他のポケモンたちの手入れに徹する。ジュラルドンという、キバナのパートナーたちのリーダー格である彼が風邪ということで、皆が落ち着かない。
 幸い、ジムチャレンジシーズンではないことで、キバナは休みを申請して、今日一日はポケモンたちにかかりきりになる覚悟を決めた。
 ポケモントレーナーたるもの、こういった不測の事態は当然起こり得る。キバナはジュラルドンの異変に朝からきがついて良かったと、不幸中の幸いを噛み締めた。

 ジュラルドンの容態を確認しつつ、コータスの甲羅を磨く。ヌメルゴンは、どうやら予想通りに風呂の湿気で体を休めているらしい。
 フライゴンはぺたりと翼を落として、ぐうすかと寝ている。各々、寛いでいるが、どこか緊張気味であった。どうしたものか。キバナは思考を回す。

 一番いいのはバトルをすることだとは、分かっている。思いっきり、気分転換になるような、バトルをするといい。でも、病気の現状、それは難しい。ならば、ならば。キバナは考える。

「あ、久々にご飯作るか」
 手製のフーズを作ろう。フーズの作成機はどこだったか。キバナは立ち上がり、キッチンに向かった。

 きのみをカットし、調味料を混ぜ合わせ、機械にセットする。
 ごうんごうんと音がして、フーズが出来ていく。最近は忙しくて手製から離れていたが、元々扱いづらいドラゴンタイプらしく、パートナーたちは偏食が激しくてキバナの手製のフーズしか食べてくれなかった。キバナの根気とポケモンたちの努力によって、今ではすっかり偏食が治ったが、たまにはいいだろう。気分転換になるといい。そう願っていると、わらわらとポケモンたちが寄ってきた。もう少し待ってろよとキバナは笑ったが、ちょいとフライゴンが首を傾げた。
「ん、どうした?」
 ポケモンたちは何かを気にしている。何だろう。そう思った瞬間に、腹の音がぐうと鳴った。ああ、自分のご飯を忘れていた。
 ちゃんと一緒に食べるぜ。そう言って安心させて、ポケモンたちにフーズを配る。ジュラルドンものそのそと起きてきたようだ。
 余ったきのみと常備しているパンとドレッシングで手早くサンドイッチを作り、皆と並んでご飯を食べる。時間は夕方。早めの夕食だろう。夜食は何がいいかな。たまには夜食ぐらい、大丈夫。キバナは近くにいたジュラルドンの背を撫でながら、長い夜に思いを馳せたのだった。

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