ダンホプ/門出を祝う/これは二次創作です


!ソード・シールドの本編及びクリア後エピソードのネタバレを含みます!

!ネタバレは一ヶ月で解禁かなと思ってましたが我慢できませんでした!


 ダンデはチャンピオンではなくなっても、家に帰ることが殆ど無い。最近は、ホップもなかなか家に帰らない日が続いていた。何故なら、学ぶことが多すぎるからだ。トレーナーとして得ていた知識と、博士になる為の知識とでは天と地ほどの差があり、ホップはうんうん呻きながら読書やデータの読み込みに熱中していた。

 そんなある日の朝一番に、ソニアに呼ばれてすっかり専用部屋になりかけていた研究所のゲストルームから出ると、今日は家に帰りなよと言われた。
「え、でも」
「あのねえ、幾ら何でも生き急ぎすぎ! 勉強は今が一番捗る年齢だけど、同時に成長期でもあるの。何より、家族を蔑ろにしちゃだめだって」
「蔑ろになんてしてないって!」
「いいから親御さんに会ってきなさい!」
 ああもう分かったよ。ここまで言うときのソニアは絶対に退かない。手早く荷物をまとめて、ホップは研究所から出た。

 ばたばたとバイウールーと走りながら家に向かう。最後に帰ったのは一ヶ月前だった。ジムチャレンジ中なんて一年程も帰ってなかったのだから、ソニアの言い分は少しばかり不満だった。帰らなくとも、会えなくとも、家族は家族なのだから平気だろうに。

「ただいまー!」
 おかえりと、母の声がするところで、もっと低い声がした。大人の男の人の声。ホップの憧れの声に、ぱっと気分が上向いた。
「アニキ?!」
「おかえり、ホップ」
「ただいま! え、なんでいるんだよ?!」
 シュートシティのバトルタワーに入り浸ってる筈ではなかったか。ホップが慌てれば、ダンデは、用があってなと言葉を濁らせた。
「贈り物をしたいんだ」
「え、アニキが?」
 ダンデはそっと紙袋をホップに渡した。ホップがおそるおそる受け取り、中身を見る前に、ダンデは実はなと頬を掻いた。
「ソニアから正式に研究員になったと聞いたんだ。だから、白衣が要るかと思ってな」
 何事もまずは形から。そうであってもいいだろう。ダンデの言葉に、ホップは紙袋をぎゅっと抱きしめた。
「着てくる!」
 慌ただしく階段を駆け上がり、自室に入って扉を閉める。ゆっくりと慎重に、紙袋の封になっていたシールを剥がして、中身を取り出した。ビニール袋に入った白衣は真っ白で、どこかウエディングドレスみたいだと、場違いなことを思った。
 白衣を纏ってバイウールーに見せる。変なところはないかと聞けば、問題ないと鳴いてくれた。そうして、決心して部屋を出る。

 リビングで寛いでいたダンデに会う。祖父母は出掛けていて、母はキッチンでごちそうの準備をしていた。ダンデの目が、ホップをうつす。ああ、とダンデは笑った。
「よく似合うぞ、ホップ」
「ありがとな、アニキ!」
 ついでにメガネでもあれば完璧だったかとぼやくダンデに、まだ目は悪くないからいいのとホップは言う。ぽかぽかと温かい心を抱きしめながら、ダンデの隣にいるリザードンに再会の挨拶をしたのだった。

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