◎御伽噺


黛今


 今吉が歩いている。黛はその隣を歩いている。何とも陽の光が似合わないやつだ。黛は目を細める。だが、それだけで今吉は分かったように黛を見る。
「お前もやろ」
「……そうかもな」
 本屋までの道のり、まるで御伽噺みたいな少年たち。黛は息を吐く。今吉は黛を見ている。
「今吉」
「ん」
 どうしたん。今吉が小首を傾げる。様になること。黛は手を絡めた。
「外やぞ」
「どうせ誰も見てない」
「そうやけど」
「本屋に着いたら離す」
「見るコーナー全然ちゃうからな」
 ちょっとだけや。今吉が艷やかに笑う。黛は光あふれる午後のまどろみが、悲鳴を上げているような気がした。


07/26 15:22
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