◎穴埋め


笠今

 俺たちには空白の時間があって。それを、解消することをせず、ただ時間を浪費していたのだ。

「後悔しとる?」
「少し」
「うっわ、珍し」
「たまにあるだろ」
「まあ、普通はあるわな」
 でも、と今吉はいつもの温和な顔で言った。
「笠松は羨ましいぐらい、真っ直ぐなところがあるから」
 だから、珍しいなと、今吉は告げる。それこそ買い被り過ぎだと答えれば、そうだろうかと今吉は首を傾げた。
「そんなに夢を見とるつもりはないんやけど」
「眠り姫みたいとは言わねえよ」
「眠り姫って夢を見るん?」
「さあな」
 でも、眠るなら見るだろう。今吉が笠松に見ている、幻想のような夢を。
「ひどない?」
「事実だろ」
「うっそやー」
「俺はそんなに出来た人間じゃねえからな」
 そうだろうか。今吉は不思議そうで、笠松は少しだけ笑ってしまったのだった。


01/08 13:24
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