◎花嫁


アルカヴェ


 羽ばたく鳥のように。
 煌びやかな装飾。カーヴェはいつだって豪奢に着飾る。それこそが彼が星である証だと信じて。
「カーヴェ、こちらに来い」
「なんだよ」
 ひょいと彼はやってくる。後ろを向かせて、軟膏を手にした。
「背中に怪我がある」
「ああ、そうかも。現場で少しね」
「あまり傷を作るな」
「無茶言うなよ」
 丁寧に傷口に軟膏を塗る。風呂に入った後にまた塗ればいい。
 大人しく腕の中にいる彼は、まるでヴェールを身につけた花嫁のようだ。彼の装いは、あまりにも豪奢である。
「アルハイゼン?」
 どうかしたのか。そう、カーヴェが言う。こちらを向いた彼を、ぎゅうと抱きしめた。突然なんだよと慌てる彼に、言う。
「俺が娶る」
「は?」
 俺のための花嫁。そう告げると、カーヴェはぱくぱくと口を動かしてから、ううとアルハイゼンの肩口に額を寄せた。
「そういうのは、告白が先だろ」
「好きだよ」
「知ってるよ、本当に、知ってたんだ」
 僕は家族を作るのが怖いよ。そう言ったカーヴェに、アルハイゼンは続ける。
「俺は嬉しいよ」
 それだけ俺のことを考えてくれたんだろう、と。
 カーヴェの腕が背中に回る。ぎゅうぎゅうと抱きしめあって、そっと口付けを交わす。
「僕もすき、だ」
「うん」
 知ってるよ。アルハイゼンの言葉に、そうだろうなとカーヴェは涙を滲ませていた。


02/29 18:33
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