◎ハンドクリーム


アルカヴェ/にょたゆり


「カーヴェ、手を出せ」
「はい」
 何だよと言いつつ、カーヴェは両手をアルハイゼンに預ける。その不用心さと信頼に、アルハイゼンは擽ったくなりながら、手のひらを撫でた。
「ん、ハンドクリームか?」
「そうだ。たくさんつけすぎた」
「気をつけろよ。んー、マッサージみたいで気持ちいいな」
「きみの手は商売道具だろう。手入れを欠かさない方がいい」
「僕だって保湿クリームは塗ってるさ。でも、他人に揉まれるとまた違うものだな」
 ふわふわと笑うカーヴェに、アルハイゼンは思わず手を引いてよろけた彼女の頬にキスをする。は、と目を丸くするカーヴェに、アルハイゼンはうっとりと目を細めた。
「相変わらず、きみは危機感が足りないな」
「なんできみに危機感を持つんだよ!」
「俺だからだ」
 きみをいっとう好きなおんななんだよ。そう笑ったアルハイゼンに、カーヴェは少女のように頬を染めたのだった。


02/26 20:08
- ナノ -