◎ヘッドホン


アルカヴェ

「アルハイゼン、きみヘッドホンどうしたんだ?」
「調整する。きみなら分かるか?」
「何が?」
「ここの配線が、」
「うん? ああこれ? 前も苦戦してたな」
 よいしょとカーヴェがメラックを呼んで、工具を使っててきぱきとアルハイゼンのヘッドホンを直していく。まれにアルハイゼンにも分からないところは、専門で学んでいるとも言える妙論派の出番であった。
「これで良し。ほかにも気になるところはメンテナンスしておいたからな」
「早いな、助かる」
「これぐらいはきみでも出来るだろ。あ、夕飯のミートロール出来てるぞ」
「今行く」
 アルハイゼンとカーヴェが食卓を囲む。ふと気がつくと、料理にスメールローズがあしらわれていた。
「ティナリがくれたんだ。完全に食用として作られたんだってさ」
「そうか。食べられるのなら何だっていい」
「またそう言って。すこし酸味があるからな」
「……確かに」
「苦手か?」
「そんなことはない。慣れないだけだ」
「そうか。嫌いではなさそうだな」
 余った分は砂糖漬けにしたんだ。楽しそうなカーヴェに、アルハイゼンはひっそりと嬉しくなる。当たり前のようにアルハイゼンと生活するカーヴェは、とても愛おしい。
 いつか旅立ってもいいと思うのに、それ以上に今が愛おしくて、大切で。アルハイゼンは矛盾したそれらをうまく飲み込むためにスメールローズを食んだのだって。


02/24 20:28
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