◎ねこ


アルカヴェ


 アルハイゼンが帰宅すると、家の中には甘い香りが漂っていた。
「おかえり」
「ただいま、何の匂いだ?」
「パティサラの花束をもらったんだ。パティサラプリンも作ったからな」
 そうか。アルハイゼンはじいとリビングの隅にあるパティサラの花束を見る。花瓶に飾られたそれは、祝い事のものらしい。
「きみ、花とか好きだったか?」
 早く着替えておいで。そんなカーヴェの言葉に、アルハイゼンはさっさと部屋着に着替えに向かった。

 食事は滞りなく終わった。アルハイゼンは本を片手にじいとパティサラを見る。カーヴェは、特に何も言わずに、スケッチブックを広げた。
「できたぞ」
「何だ」
 ほら、と見せられたのはパティサラを眺めるアルハイゼンだ。どことなく幼なげに見えて、アルハイゼンは不満だったが、カーヴェのらくがきに選ばれたことは嬉しかった。
「そんなに気になるなら、部屋に一輪持って行くか?」
「いや、いらない」
「じゃあ何でそんなに気にしてるんだよ。パティサラならシティに生えてるだろ」
「家にはなかった」
 ふん、とアルハイゼンは言う。
「俺の家にパティサラは無い」
「……きみは、猫か何かか?」
 呆れ顔のカーヴェに、それがどうしたとアルハイゼンはパティサラから離れたのだった。


02/18 20:58
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