◎誕生日の特権


アルカヴェ/にょたゆり/ア誕生日おめでとう作品


 フルーツのタルトに、クリームを添える。カーヴェの好きなデザートの一つだ。フォンテーヌで母親が作ったものを食べて、レシピを教えてもらったのだとか。
「なんだよ、食べないのか?」
「食べる」
 じゃあどうぞ。カーヴェが渡してきたフォークで、遠慮なくタルトを崩す。彼女が何か言う前に、一口分を口に運んだ。
「あまい」
「そりゃあ、おやつだからな」
「もう少し甘さを控えるといいよ」
「どこ目線なんだよ」
「そう言っておけば、来年に活かせるだろう」
 けろりと言ったアルハイゼンに、カーヴェがたじろぐ。
「いや、まあ、確かに来年こそは」
「俺の誕生日だろう」
「そうだよ! きみは必要ないと言うけどね」
「そうは言ってない。きみの時間を食べられるのは、なかなかいい」
「時間って」
 気まずそうな彼女に、アルハイゼンは告げる。
「このタルトを作る間、俺のことを考えたのだろう」
「そう、だけど、」
「それこそが何よりも贈り物になっている」
「なんだそれ」
 不可解そうなカーヴェには、到底わからない。
 自分自身の深い愛情を理解しない限りは。
「美味しいよ」
 アルハイゼンが微笑むと、カーヴェは嬉しそうに頬を染めた。


02/11 21:59
- ナノ -