◎可愛い


アルカヴェ


 そうっと手を伸ばす。指が絡んだ。
「アルハイゼン、きみねえ、」
「いいだろう」
 絡んだ指を引っ張って、カーヴェが寄りかかってくる。嬉しくなって、片手を彼の背中に寄せる。ぐいと抱き寄せると、カーヴェは息を吐いた。
「きみのにおいがする」
「そうだろうな」
「僕のにおいはするかい?」
「うん」
 花の香油と、カーヴェ自身の柔らかなにおい。アルハイゼンはすんすんとカーヴェの首筋に顔を寄せて、べろりと舐めた。
「こら、まだ昼間だぞ」
「だめなのか」
「だめだ。僕は仕事だってしたい」
「今日は週末だろう」
「僕は個人事業主なんでね」
 その言葉に、休息も大切だと告げる。カーヴェは知ってるよと笑った。
「今度まとめて休むから、ほら、手を解きな」
「やだ」
「あのなあ、なんで急に可愛いことするんだ?」
「きみからしたら可愛いだろうな」
「はいはい」
「カーヴェ、今日はまだ仕事が急ぎではないんだろう」
「そうだけど」
「俺と昼寝すればいい」
「なんでだよ」
 ぎゅうと抱きしめて、耳元で囁いた。
「可愛いきみを補充したい」
「……はあ」
 きみなあと、カーヴェは苦笑した。
「そういう人間味を他の人の前でも出すといいぞ」
「必要性を感じない」
「だろうね。ほら、昼寝するならベッドに行こう。カウチには二人も並べない」
「うん」
 そうして、アルハイゼンはカーヴェをエスコートして、寝室に入ったのだった。


01/17 20:31
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