◎迷信
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アルカヴェ
迷うことはない。
カーヴェは悩む。いつも、飽きずにずっと悩んでいる。その苦悩の大半は、カーヴェが考えなくてもいいものだ。息をすることが下手な鳥を、アルハイゼンは少し後ろで見ている。いつだって、カーヴェは輝いている。それは外面の妙論派の星として、ではない。苦しんで、もがいて、足掻いて、泥臭く生きている。それが、どうしようもなく、輝いている。
アルハイゼンの理解にはないもの。それを、カーヴェは持っている。体現する鏡をどうして愛さずにいられようか。
正反対とは言わない。ただ、アルハイゼンの絶対的他者として、カーヴェは都合がいい。
彼自身がどう思おうと、カーヴェは都合のいい人なのだ。
「アルハイゼン! 飲むぞ!」
「俺のモラだろう」
「いや、依頼人が報酬のひとつに葡萄酒をくれたんだ」
瓶を持つ彼の後ろ、メラックが安全だと知らせている。仕方がない。アルハイゼンは本に視線を戻す。
「きみが肴を作るならいいよ」
「言ったな! とびきりのを使るからな!」
さあ、何がいいだろう。カーヴェが楽しそうに食糧庫を眺めるのを見て、アルハイゼンは思う。
食を任せていることに、彼はどう思っているのか。たまに、不思議に思う。アルハイゼンなりの、信頼の証だが、カーヴェにとっては食生活の充実の他には意味がないのかもしれない。
ただ、一人で食べるより、二人で食べた方が満たされることを、互いによく知っている。
「アルハイゼン! きみにしてはいいチーズがあるじゃないか!」
「先日買っただけだ」
どんな料理にしようかと悩むカーヴェが、やはり、輝いている。
01/13 16:06