◎飾り切り


アルカヴェ/掌編


 ぐつぐつ、ゆらゆら。スープの中で野菜が踊る。アルハイゼンはじいとそれを見ていた。
「きみ、そんなに面白いものか?」
「面白くはないが、きみが愉快なことをしていたからな」
「ああ、飾り切りかい? 簡単に型でくり抜いたぐらいだけど?」
「ナイフも使っていただろう」
「少し模様をつけただけだって。何でそんなに気にするんだよ」
「お祖母様も、作っていたことがある」
「そうなのか? なんだか、悪いことをしたな」
「きみが負い目を感じる必要はない。ところで、俺は汁物は遠慮する」
「きみのためにチキンの香草焼きも作ったから安心しろよ」
 でもスープも少しは飲めとわざわざ飾り切りの野菜を取り分けようとするカーヴェに、難儀な男だとアルハイゼンは首を傾げた。


01/01 22:14
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