◎またまたですね@風見
またまたですね/風見/名前のない猫視点
カザミという人間がいる。
たまに撫でててくれるその人間は、ワタシがとある人間の飼い猫だということを知っている。
ワタシの飼い主は、ワタシを閉じ込めることを良しとせず、こうしてぶらぶらと散歩させてくれる。
外を歩き、日陰で眠り、餌はキャットフードを与えられている。たまに食べるおやつは魚屋の新鮮な小魚や、肉屋の肉の切れ端だ。比較的健康的な生活が送れているのではないだろうか。
ワタシは馴染みの商店街を歩く。人間が多いが、ワタシはスマートな猫だ。すいすいと歩いて、屋台の上に乗り上がる。しばらく生きてきたが、運動能力はまだまだある。
そんな商店街に不定期に現れる人間の一人がカザミだ。
彼はワタシに気がつくとゆっくりと瞬きをする。そろそろと近付けば、わしわしと優しくも強い、心地の良い撫で方をしてくれる。
カザミはどうやら忙しい職についているらしい。今日は目の下にはっきりとクマがある。
(またまたですね、カザミ)
にゃあごと鳴けば、珍しいなとカザミは笑った。まったくもって、人間は睡眠を軽視しすぎている。他にもあまり眠っていない人間がワタシのテリトリーには何人もいるのだ。その中でもカザミはひどい。
仕方がないのでワタシの毛を撫でて癒されるが良い。そう思って手に擦り寄る。スーツに毛がつくとまずいのだと前に言っていたからだ。
「きみは本当に人馴れしているな」
誰のせいでこんなことをしているのか。少しばかりの怒りが湧きつつも、この人間がせめて今だけは安らかでいられるように、ワタシは人の猫たる仕事を果たすのだった。
06/29 08:50