◎愛という名の毒を


クロマリ/支援Aぐらい

 例えばですわ。マリアベルはそう切り出した。
「この世に一つとして解毒剤のない毒があるとしたらどうしますの?」
「……そんなものいくらでもあるだろう?」
 例えばの話ですわとマリアベルは穏やかな顔で繰り返した。
「そしてその毒に私が蝕まれ続けていたとしたら、クロムさんはどう思いますの」
 クロムはその言葉にぎょっとし、衛生兵を呼ぼうとするので、例えばの話ですわとマリアベルは笑った。
「ごめんなさい。少し意地悪でしたわ」
「冗談、なのか?」
「ええまあ、そのようなものですわ」
 だからお気になさらず、とマリアベルはクロムのティーカップにお茶を注いだ。
「お茶菓子はクロムさんの好きなものを用意出来たはずですわ」
「ああ、これは好きなものだが」
「よかったですわ」
 そうしてマリアベルはリズの話を始め、ゆっくりとクロムに話の主導権を渡していく。クロムはそれに気が付かぬまま、でもどこか不思議な気持ちで二人きりのお茶会を楽しんだのだった。



08/22 23:30
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