◎星空を見て
クロマリ/クロム×マリアベル/支援Aぐらいのつもりです
それは小さなオアシスでのこと。
夕方も過ぎ、夜の始まりの頃。マリアベルは空の星が気になって、ランプと図鑑を片手に天幕を抜け出した。
夜とともに昇る星、あれは何だろうこれはこの星だろうか。図鑑と夜空を行ったり来たりしながら、マリアベルは自分が普段学ぶ法学とはまた違った勉学に深い興味を覚え、目を輝かせて空を見上げた。満天の星空。町中よりももっと多く見える気がして、マリアベルは戦争の中ではあるが、こうして館の外に出ていられることに感謝した。
その時、ふとマリアベルの後方から声がした。マリアベルが振り返るとそこには剣を片手にこんな時間に珍しいなと意外そうな顔をするクロムがいた。
「まあクロムさん!こんな時間にお一人で鍛錬ですの?」
「まあな、少し体を動かしたかったんだ」
「書面と向き合うばかりは確かにクロムさんが苦手としていることですが、しかしあまり一人で行動なされてはルフレさんフレデリクも私も心配しますわ」
「そうか。しかし鍛錬ぐらいは」
「フレデリクなら喜んでお供すると思いますわ」
「それは、そうかもしれないが。しかし、マリアベルこそこんな時間にどうしたんだ?」
マリアベルは図鑑の表紙をクロムに見せてから夜空を指差した。
「星を見ていましたの。クロムさんも如何でしょう」
「俺はあまり、勉学は」
「ならこの物語ならご存知ではありませんこと?」
マリアベルはそう言って図鑑を捲り、目的のページにある物語を読んでみせた。するとクロムはその話なら聞き覚えがあると、瞬きをして驚いた。
「その物語に出てくる英雄の星があの星になりますの」
「そうか、それは面白いな」
「ええ!」
マリアベルは物語ならいくらでも読み上げますわと笑い、クロムは自分で読むさと苦笑した。
「それよりももう夜が更けてきたから天幕まで送ろう」
「まあ、ありがとうございます。クロムさんも早くお休みになってくださいませ」
「ああ、そうする」
そうしてマリアベルが本とランプを持って立ち上がると、クロムは彼女を導くように天幕まで送り、二人は分かれたのだった。
07/16 17:10