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 2023.06.12.Mon:00:34

フリーワンライお題で自主練させていただきました。
使用お題:金木犀/水に映った月/縋った手は/記念日前夜/夢オチ(オチ指定)
ジャンル:二次BL
CP:アルカヴェ
タイトル:あなたのとくべつな日
#真剣文字書き60分自主練編
完全に時間感覚忘れてて60分書けなかった。


 眠れない夜。やさしい金木犀の香りがした。カーヴェはふっと起き上がり、それを見る。夜の中、淡く光る金木犀が、はらはらと落ちていく。地面には、きらきらと輝くような黄金の絨毯が出来ていた。カーヴェはそっと足を踏み出す。ぺたぺたと、素足でそこへ向かうと、金木犀の下で本を読むアルハイゼンがいた。
「君も眠れないのかい」
「君も、か」
 アルハイゼンは、ただ、そう言う。悪いことは何もない。だから、二人に口論は生まれない。
 カーヴェはすっと横を見た。金木犀は水際に植えられていた。水を特別好む木では無かったはずだ。なぜ、こんなところに金木犀が植えられているのだろう。
「月は見えるか」
 アルハイゼンは本から目を離さない。カーヴェはそっと水面を見る。月が揺れていた。満月だった。その満月がケーキみたいに美味しそうで、カーヴェは手を伸ばす。届かない。ふらふらと水場に向かう。ちゃぷ、と足を濡らした。進み、水を掬い、月を手にする。
「ほらごらん」
 そう振り返ろうとすると、アルハイゼンがきゅっとカーヴェの服を掴んでいた。すがるように、後ろを掴まれている。中途半端に振り返ったまま、カーヴェはきょとんとするしかない。二人の足は濡れている。
 アルハイゼンは言う。
「もう夢から覚めるといい」
「どうして?」
「君を待ってるからだ」
「なんで?」
「明日は、」
 そうだ、明日は。

 目覚める。カーヴェはカレンダーを見た。アルハイゼンの、祖母の命日だった。
 記念日、とは少し違うけれど。いつもより丁寧な身支度をして、お祖母様に会いに行かなければ。カーヴェは隣で眠るアルハイゼンの腕から抜け出すために、トントンと、彼の逞しい腕を叩いたのだった。



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