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 2023.05.12.Fri:21:56

crom版ワンドロライ提出作品『トップは今日も全力です!』
使用お題:午睡/春
CP:crom
タイトル:トップは今日も全力です!
注意:aokさんとmくほーくが出てきます。
#cromワンドロライ


 春、まどろみ。午後の業務の隙間。気分転換にリーグの外に出て、影が差す。ふと、見上げる。オモダカが窓枠から、飛び跳ねた。あ、降って来た。チリは宝石の様な乙女を腕で受け止める。何故なら、ポケモントレーナーの能力は尋常ではないので。
「なにしてんねん!」
「チリ、流石です」
「いや、いやいや。ふつーに階段使いや」
「だってチリが居たんですもの」
 ニコニコと笑って、では行きましょうとオモダカは手を繋いで駆ける。待って、チリは足をもつれさせないように走る。

 まるで、年端も無い少女のように、二人で走る。
「何でチリちゃんたち走っとんの?!」
「他の地方との境目で流行病が出たそうなので、その調査に行こうかと」
「絶対に総大将自らやる仕事やないやん!」
「いいえ、私の目があるうちはパルデアに恐ろしい病など持ち込ませたりしません!」
「それは立派な心がけやけどなあ!」
 たったと走る。アオキがムクホークで飛んできた。飛行許可は得たのだろうか。チリは思う。絶対に取ってない。ムクホークから降りたアオキは静かに言った。
「……ふたりでどうぞ」
「助かります」
「いや、何言うとんのアオキさん、って、あー! オモダカさんもう乗っとる!」
「ほらチリ、行きましょう」
 手を差し伸べられる。微笑まれる。ああもうと、チリはその手を取った。

 春の午後。まどろみ。日陰での午睡に丁度いいだろうに。強くも柔らかな光の中を、二人で飛んだ。
「次はせめてタクシー使うてもろて」
「チリは記録係を頼みますね」
「アッハイ」
 オモダカは自分のパートナーでもないのに、ムクホークに言うことを聞かせる。おそらくこれは一度や二度ではないのだろう。チリは帰ったら聞かなければと、脳内のメモに書き付けた。
 ふっと、オモダカが視線を向ける。
「あそこです」
「うわ、山奥やん」
「ムクホーク、いけますね」
「なにするん」
「テラスタル、のち、ブレイブバード!」
「無茶言いなさんな!!」
 ああもうどうにでもなれ!
 チリはぎゅっとオモダカに抱きついた。スーツ越しなのに、柔らかくて、大切な人の温もりがした。



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