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 2020.04.26.Sun:14:46

キバネズ強化期間企画様へ提出作品
お題:花言葉
ジャンル:二次BL
CP:キバネズ
タイトル:ブーゲンビリアと共に
付記:ブーゲンビリアの花言葉はpassion(情熱)を採用しています。
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#241061_bingo


 いつもよりも早く、待ち合わせの場所に着きそうだった。だから、道中で花束を買った。店先に誇るように飾られていた赤いブーゲンビリアをメインに据えてもらった花束は、なかなかの値がしたが、キバナは迷う事無く購入した。
 時に、花言葉というものがある。各地方で違うともいうそれを、キバナは好んでいた。だから、ブーゲンビリアの花言葉も当然知っていて、ネズに似合うと確信したのだ。
 花束を手にルートナイントンネルの出入り口で待つ。ざわざわと風の音がした。ああ、雲が流れていく、青い晴れ間が覗く。今日はいい天気だ。キバナは嬉しくってスキップしたくなった。そこで、おっとと花束を持ち直す。野生ポケモンと遊んでいた、相棒のジュラルドンがくるりとこちらを見た。大丈夫だと、手を振ると、満足そうに野生ポケモンとの花遊びに戻った。

 ガラルは霧と雨の国と呼ばれることがある。朝霧や夕霧はよくあるし、雨もよく降る。かつての人間とポケモンとの諍いによって荒廃した大地に、慈しみの雨は大変貴重だ。キバナの根城であるナックルシティは晴れ間が多く、今となっては住みやすいが、太古には雨が少なくて食に困る土地だったらしい。物流をコントロールすることで成長し、更には城塞都市として街をコーディネートすることで、ナックルシティはガラルでの地位を確かなものにした。

 ブーゲンビリアの花がまた揺れた。思考の海から意識が浮上する。ルートナイントンネルから、こつこつと、ゆっくりとした足音が聞こえてきた。そのヒールの音に、ああと、振り返る。薄暗いトンネルの中には白黒の、愛しい影があった。
「ネズ!」
「キバナ、おはようございます」
「おう、おはよ。これ、受け取ってくれるか?」
「ブーゲンビリアですか……また、愛らしい花を選びましたね」
「今日はこうして会えるだけだからさ、とびっきりの花を選んだつもり」
 色の少ないネズの腕に抱かれた赤いブーゲンビリアの花束は、鮮やかにネズを引き立てる。肌の血色が僅かに良くなったようにすら見えて、やっぱり似合うとキバナは満足した。
「じゃあ向こうで話そうぜ。キャンプの用意ならあるからさ」
「カレーでも作りますか」
 とびっきりのデコレーションカレーでも用意しましょうと笑むネズは、なかなかに上機嫌らしい。花束が効いたようで、キバナは嬉しくなる。

 やっぱり、ネズにはブーゲンビリアが似合う。町に捧げる情熱は、誰にも負けない。音楽に力を注ぐ姿は、情熱以外のなにものでもない。キバナを愛しいと見るネズの目は、情熱としか言い表せられない。

「ねえ、キバナ」
 くるり、とキャンプを設置中のネズが振り返った。
「今度は、おれがブーゲンビリアを贈りますよ」
 おまえにこそ似合うでしょうなんて、なんて似たもの同士だろうか。キバナは笑い声を上げた。
「いいなそれ。すっごく嬉しい!」
 やっぱりネズはオレさまの予想以上だ。そんな言葉に、ネズはおまえほど気が利きませんがねとそっぽを向いた。
 その耳はほのかに色づいていて、素直じゃないところも可愛いなあとキバナはへらりと笑った。そんな顔を見たジュラルドンが、キャンプはまだかと急かしたのだった。



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