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 2020.04.12.Sun:15:37

キバネズ強化期間企画様へ提出作品
お題:ピアスホール
ジャンル:二次BL
CP:キバネズ
タイトル:羨望/憧憬/情熱
付記:ピアスホールに憧れを抱くネズさんの話です。
#241061_fes
#241061_bingo


 小春日和、暖かな部屋の中。こんな日は外に出るべきだろう、とも思う。でも、家の中でゴロゴロとするのも悪くなかった。

 ふと、スマホロトムの反射光を辿る。日に照らされたキバナの耳元を見た。そこにはピアスがある。真摯で生真面目な自身を覆い隠すかのようなピアスは、彼らしくないのに、彼の作り出したイメージによく似合う。
 いいな。純粋に思った。彼とお揃いのピアスを付けられたら、良いのかもしれない。
 ネズは自分の体に傷をつけることを嫌った。故に、ピアスなど以ての外だった。だが、ここで初めて、ネズはいいなとそれに羨望の眼差しを向けたのだ。

「なに?」
 くるりと、キバナがスマホから目を離し、ネズを見る。そうっとピアスに目を向けて、いつの間にか弄っていたチョーカーから手を離した。それだけで、キバナはネズの思考を読み取ったらしい。実に彼らしく、器用なことである。
「ピアスが羨ましいの」
 傷を嫌うオマエが、とキバナは不思議そうに言う。誰よりも、ネズのその潔癖さを知る彼だからこその疑問だった。
 だから、ごまかしたくなった。捻くれた性分はなかなか治らない。もう大人なのだ、性格など変えようがない。当たり前のことだろう。
「ロッカーならおかしくはないでしょう」
「でも、ネズは開けてないじゃん」
 ピアスホールをさ。キバナはそう言ってネズの耳元をするすると撫でた。つま先まで整えられたキバナの男性らしいごつごつした手が、滑らかに移動する。ふにふにと耳たぶを触られる。嫌ではなかった。

「もしピアスホールを開けるなら、オレさまにやらせてくれよ」
 痛くしないから。そんな甘い睦言のような言葉に、ネズはハッと笑った。
「病院で開けてもらいますよ。膿むと厄介ですから」
「ケチ」
「どうとでも」
 ああでも、ネズは言った。
「ファーストピアスはおまえが選んでください」
 いいの。キバナが驚き、目を見開く。薄いブルーの目に、普段通りのローなネズがうつっていた。これがバトルなら、お互いに獰猛さを隠さないだろう。今はオフなのだ。改めて思う。

 さて、ファーストピアスだ。色んなカラーがあるんでしょう。ネズは淡々と言う。
「精々、おれに一番似合うピアスを選びやがれ」
 そんな言葉はどこか笑みを帯びていて、キバナは任せろよと胸を張った。
「一番鮮やかなの、選ぶから」
 ネズには色が似合うよ。そんなキバナがネズの手を撫でる。指と指が絡み、繋がった。

 春に負けない温かな体温に、ネズは思わず顔を綻ばせた。キバナもまた、ゆるゆると笑っていた。



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