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 2020.03.28.Sat:21:35

kbnzドロライ企画様へ提出作品
お題:愛の形
ジャンル:二次BL
CP:キバネズ
タイトル:バベル
付記:夢の話です
#kbnz_weeks


 誰かを愛した形跡を、辿る。


1.ミラージュと眠り薬


 最近、キバナは不眠に悩まされていた。健康状態を言えば、誰もが納得する健康優良児だった筈だが、どこで間違えたのか。キバナは原因を探るよりも、先に対処療法を試さねばならなかった。どんな精密機械よりも繊細な人間は、眠らないと不具合を起こす。健康優良児であったキバナももれなく"そう"であった。
「ジュラルドン、ごめんな」
 不安そうなジュラルドンに、キバナはそっと撫でてやることで答えた。時間は夜。キバナは睡眠薬を飲んで眠る。眠る前の、ポケモンと微睡む時間が減ったのが非常に悔やまれる。キバナは昼間は激務に追われる故に、ポケモンとのふれあいは主に夜の寝る前に行うのがルーチンワークだった。
 寂しいな。頼もしい相棒のジュラルドンはそんなことは言わない。寂しいのは己だ。キバナは最愛のパートナーたるポケモンたちを少しずつ撫でてやってから、床についた。


・・・


 手を伸ばす。掴めない。だが、確かにほしいものがあった。長い手を伸ばす。やはり、掴めない。

 夏の昼間。ガラルにだって、蜃気楼は訪れる。"それ"は正にそのようなものだった。

 崩れかかった塔だった。蜃気楼の塔はぐらりぐらりと揺れている。高さは、見上げても天辺が見えないほどであった。

 塔には扉がある。だが、いくら手を伸ばしてもそれは掴めない。まどろっこしい! そんな叫びが、どこか遠くに聞こえた。

 最後に、音楽が聴こえた。歌う言語は分からない。ただ、どこか温かな気持ちになる音楽だった。


・・・


 キバナは目を覚ます。時間ピッタリに起きて、キバナはぐりぐりとストレッチをした。何か、夢でも見たのか。否だ。キバナは夢を覚えていない。つまり見ていないも同然だった。
「おはようジュラルドン」
 他のみんなも起きてるか、起きたなら朝飯食べるぞと、キバナは声をかけていったのだった。


・・・


 愛とは何ぞや。蜃気楼の答えは"そこ"に行きつくだろう。

 過程にて、歌を理解せよ。それは必須の項目だった。

 かくして、最終結末。そこで自己を見極めよ。さすればそう、二人はようやく出会えるのだから。



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