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 2020.03.14.Sat:22:06

kbnzドロライ企画様へ提出作品
お題:ホワイトデー
ジャンル:二次BL
CP:キバネズ
タイトル:ぱりぱりのミルフィーユ
付記:ユウリとマサルとマリィとビートとホップが出てきます。
#kbnz_weeks


 スパイクタウンの奥、ネズの家ではお菓子作りが行われていた。市販のパイシートに、生クリームにバタークリーム。生のベリー類は色鮮やかだ。マリィとユウリ、ホップにマサルがそれぞれ趣向を凝らしてミルフィーユ作りに励んでいた。そんな彼らをサポートするのが家主のネズだ。
 丁寧に作り上げていく様々なミルフィーユを、ネズは愛おしそうに見つめる。

 そんなネズと子どもたちからあぶれて、他の部屋で完成を待つのはキバナとビートだった。
「キバナさんは分かるとして、どうしてこのぼくが」
「素直に待とうぜ」
「ただバレンタインデーに友チョコをポプラさんに唆されて渡しただけなのに」
「原因わかってるじゃん」
 貰えるもんは貰っとけ。そんな適当な返事に、それでいいわけないでしょうとビートは熱弁する。
「そもそもぼくが先手だっただけで、友チョコ交換は皆でしましたし?! どうしてぼくだけホワイトデーにお返しを?!」 
「それだけ嬉しかったんだろ」
「ああ、バアさんに唆された事実がエリートなぼくを苦しめる……」
「ポプラさん全部見抜いてそうだよな」
「くっ、通りで笑顔で見送られたわけですよ!!」
 というか。キバナはミルクティーを飲みながら言った。
「オレは分かるってなんでだ?」
「き、キバナさんとネズさんは恋人同士なんでしょう」
「うんまあ、知ってたんだ?」
「嫌でもわかりますよ……よく二人の世界になってますし」
「え、マジ?」
「幸せそうで何よりです。ポプラさんがいつ結婚するのかと楽しみにしてましたよ」
「式はネズが嫌がりそうなんだよなあ」
「まあ、嫌でも目立つことになりますけど、元々ミュージシャンとジムリーダーの立場上注目されるのは慣れているのでは?」
「いやそれはそうなんだけど、ネズの心がなあ」
 オレさまには分かるんだよ。キバナは微笑んだ。
「まだその時じゃない、ってな」
「そうですか?」
 ぼくにはよく分かりませんが。ビートはそう言いながら、ティーカップを持ち上げた。

 しばらくの無言。キッチンが静かだなと二人が振り返ると、ばんっとドアが開いた。

「ビート! ハッピーホワイトデーなんだぞ!!」
「ハッピーホワイトデー!」
「「ぜひ食べて!!」」
 ホップ、マリィ、そしてマサルとユウリの息のあった掛け声に、ビートは目を丸くした。

 そこには各自それぞれの趣向を凝らしたミルフィーユが更に並んでいた。不器用ながらも丁寧な仕事が見えるそれに、キバナもおおと目を見開いた。
「上手にできてるじゃん」
「頑張ったけん!」
「良くできましたね、子どもたち。さあ、席に座って、新しく紅茶を入れましょう」
 ネズの言葉に全員が席につき、ネズの手でティーカップが並び、紅茶が注がれる。華やかな香りはアールグレイだろうか。ミルフィーユに負けない香りに、誰ともなくほっと息を吐いた。
「そしてキバナにはこれを」
 どうぞと渡されたのは苺のミルフィーユだった。
「やった!なあ、写真撮っていいか?」
「SNSには上げないでくださいね」
「うーん、ま、そうする!」
 ヘイロトム!全員の記念写真もまとめて撮ってくれ!そんな声にスマホロトムが反応する。

 パシャパシャとカメラ音がする中、ミルフィーユを食べる。ぱりぱりとしたパイ生地に、濃厚なクリームがよく合う。

 ところでと、ビートがミルフィーユの山を食べながら言った。
「キバナさんはホワイトデーになにか贈り物をしないんですか?」
 嗚呼、とキバナはにこりと笑った。
「もう渡した」
「えっ」
 そう言ったキバナに、ネズかそっと右腕を上げた。そこには調理中にはなかったブレスレットがほんのりと煌めいていた。
「なんとメッセージカード付き」
「カードになんて書いたんだ?」
 きょとんとするホップに、キバナとネズはしぃと指を口元に寄せた。
「秘密です」
「秘密だぜ」
 その様子に、ホップは仲良しそうで何よりなんだぞと笑った。それを皮切りに、マリィやビート、マサルにユウリも楽しそうに笑って、ミルフィーユへと意識を戻したのだった。



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