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 2017.09.25.Mon:00:55

第116回フリーワンライお題で自主練させていただきました。
使用お題:結晶になる/映える/指先へのキスは冷たいもので/幸せになりますようにと、ただ、それだけを/忘れるということ
ジャンル:二次BL
CP:髭獅子
タイトル:たからもの
#真剣文字書き60分自主練編
すこしふしぎな話


 結晶化、審神者の風邪によって不安定な霊力が本丸を満たした結果、起きた騒動である。急いでこんのすけが調べたところ、審神者の霊力が安定すれば後遺症もなく元の刀剣男士に戻るとのことで、本日は出陣はもちろん内番もなるべく休むこととのお達しが審神者から刀剣男士へと伝わった。
 その日、獅子王は髭切の膝でうとうとと船を漕いでいた。それを髭切は優しい目で見つめ、そっと彼の手をなぞった。その指先は今日本丸を騒がせている結晶化が起きており、薄い黄色味を帯びた水晶のような指に髭切はそっと触れた。獅子王は反応しない。痛覚まで失われているのかと髭切はふむと理解し、ならばとその手を持ち上げた。そうしてそっと指先に口付けを落とすと、その冷たさに苦笑した。冷たい水晶に口付けても何の意味も無いだろうに、髭切は繰り返しその指先に口付けた。
 やがて、ふわりと獅子王が目覚める。何してるんだよと、舌ったらずな声で言うから、髭切はおまじないさと笑った。
「キミのこの手が早く治りますようにってね」
「こんなの、主の風邪が治れば治るだろ」
「そうだね」
 でも、だからだよと髭切は笑った。
「もしも、僕の口付けで治ったら、とてもロマンチックだと思わないかい?」
「うーん、そうかもな」
 よくわかんないけど、髭切が言うならそうなんだろうなって獅子王は言うと再び船を漕ぎ始めた。こっくり、こっくり、穏やかな波だと髭切は微笑み、そっと彼を包み込むように抱きしめる。
「キミの名を、忘れられたら良かったのかな」
 返事が無いことをいいことに、髭切は呟いた。
「幸せになりますように」
 そう願えてしまうじゃないかと苦笑した髭切に、獅子王はぱちりと刃色の目を開いて、いいだろ別にと言った。
「幸せになったっていいだろ」
 俺は髭切と幸せになりたいよ、そうして胸に頭を擦りつけた獅子王に、全くキミはと髭切は微笑んだ。
「幸せになりますように」
 そうして獅子王のうなじに口付けた髭切に、獅子王は身を捩ってくすぐったいと笑った。
 さらに、結晶化した指先にも口付けた髭切はそっと己の神力をその指先へと送る。びくりと震えた獅子王に、感覚は戻ったかいと髭切が微笑めば、お陰様でと獅子王は少しばかり不満そうに髭切の手の甲を結晶となった指先でなぞったのだった。



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