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 2016.01.25.Mon:01:12

第31回フリーワンライ企画様へ提出作品
使用お題:揺さぶられる母性/涙の音/雨の日の約束/夢の続き/簡単には逃がしてやらない
ジャンル:オリジナルNL
タイトル:大丈夫、追いかけてあげるからね。
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
ふんわりとしたお話になってしまいました。ヤンデレ風味です。



 豪雨の音がする。手の中にきみの体温、囁かれた約束。僕はまどろみの中、意識が朦朧としていた。瞼の裏の先に、俯くきみが見えた。肩が震えていて、膝の上で強く握りしめている手も震えていた。たとえ見えなくとも、触れなくともその頬はしっとりと濡れているのだろう。意識したとたんに、頬を伝う涙の音が聞こえた。きみは震える手で腹を触った。撫ぜるその手は細くて、力を込めて握れば折れてしまうだろう。そこできみは顔を上げた。濡れる頬、真っ赤な目。けれど目尻は優しくて、口は柔らかな弧を描いていて。
(嗚呼、そうか。)
 きみは母と成った。

 目覚める。手の中には体温が移った鍵。枕元には置き手紙。読まなくたって分かるから、後で目を通すことにした。
「しあわせでしあわせで、こわくなってしまったんだね。」
 外は暗く、きみの名残りを感じさせない部屋で、笑う。
「簡単には逃がしてあげないよ。」
 きみの触った鍵に口付けた。



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