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 2016.01.25.Mon:01:10

第24回フリーワンライ企画様へ提出作品
使用お題:コスモス/青いままの紅葉/歓喜よ、永久たれ/甘ったるいの作り方
ジャンル:オリジナルNL
タイトル:諦めていた僕にきみは踏み込むのだ
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
遠くない未来に僕はきみをおいて行く。


 時計の針が午後一時を刻む頃。トントンとドアがノックされる。どうぞと一言言えば、右手でドアを開き左手を後ろに回したきみが居た。どうかしたのと笑かければ、ゆっくりと歩み寄ってくる。不思議な心地で見守れば、きみは後ろに回していた左手を動かしてそれを差し出した。それは白色灯の下でささやかにピンクを主張するコスモスだった。一輪のそれに、ふと僕の頭上に飾られた枝を見る。枝についた葉は青いままの紅葉で、前回きみが来てからまだそんなに経っていなかったことを視覚的に教えてくれた。無言でコスモスを差し出し続けるきみの、いつだって眠たげなきみのきまぐれに、僕はそっと目を閉じる。喜び、恐怖、安心、怒り、愛情、苦しみ。ざぶざぶと沢山の感情が湧き、打ち付けあい、せめぎ合い、しかしどれだけ暴れようと容器のフチからは落ちることはなく。わずかな間をおいて静かな表面張力で浮き上がった感情のままに考える。
 きっときみへ手を伸ばせば良いのだろう。コスモスを受け取り、キスをすれば良いのだろう。ゆっくりと、確実な愛を紡げば良いのだろう。
 同時に思う。白い壁も、白い床も、白いベッドも、きみには関係ない。だと、いいのにと。
「馬鹿だなあ。」
 言ったのは僕なのかきみなのか。沼へと沈み込むかのような気持ちがして、近付いた温もりに息を吐く。触れた手が恐ろしいほどに温かくて、優しくて。首筋を辿る指先と、合わされた柔らかな眼差し。それら全てに涙すら零れそうだ。
「あいしているよ。」
 嗚呼歓喜よ、永久たれ。



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