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 2016.01.25.Mon:01:05

第12回フリーワンライ企画様へ提出
使用お題:豪雨カーテン/境界線へと飛び込もう/知らない、見ない表情を /誘惑の果実 /プラネタリウム
カテゴリ:オリジナル
タイトル:たとえ知らなくとも
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

 ざあざあと雨が降っている。目の前は豪雨、僕ときみは雨に濡れてはいなかった。暗い集中豪雨、目の前に丁度ある境界線に心がゆらりと揺らめき、きらきらと輝き出す。その気持ちに逆らうことなく、僕は弾むように飛び出した。
 瞬間、腕が濡れる感覚した。遅れて体全体が濡れてゆく。しかし、まとわりつく服も、冷えて行く体も、日の光が遮られているのも、全てが気にならなかった。僕は意味もなく叫び、飛び跳ねる。くるくるとその場で回り、スキップや踊りのようにステップを踏んだ。
 回る途中で、ふと、濡れないきみが見えた。日差しのその下、きみのその顔は僕が見たことながない、知らない顔で少し驚いた。けれど、きみがその顔をすることを知らないだけで、僕はその顔を知っていた。そう、それはまるで誘惑の果実を食べてしまったヒトを見るような。

 きっと、きみは人工の星空で喜ぶ人たちを見ても同じ顔をするのだろう。僕の知らないきみは、そういう人だったのだ。けれどそれは悪いことでも何でも無い、ただの個性であって、何も特筆することではないのだろう。
 なので僕はきみを気に留めず、くるくると弾む心のままに動き続けることにしたのである。



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