◎掠り傷


いち♀あい♀


「愛染、大丈夫かい」
「あ、一期さん! 大丈夫だぜ、これぐらい」
「怪我をしたんだから、手当てしようね」
「掠ったぐらいで大袈裟だなあ」
「愛染は過保護なぐらいで丁度いいんだよ」
 すぐ無茶をするから。そう心配する一期は良き姉そのもので、擽ったいなと愛染はむず痒くなる。明石はあくまで父親のようなもので、放任主義だから、余計にくすぐったくて堪らない。
「なら、一期さんが怪我したらオレに心配させてくれるか?」
「いいのかい?」
「ええ?」
 当たり前だろ。愛染はぷうと頬を膨らませた。
「心配してくれる、愛してくれるんだから、愛を返さないとな!」
 愛染明王を背負う刀として当然だと、愛染は太陽のように笑う。一期はそれを眩しそうに見つめて、ぜひそうしておくれと愛染の小さな掠り傷の上に口付けを落としたのだった。

11/12 17:18

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